楽しむのにパワーは必要か? 100馬力以下の名機 5選 速さにこだわらない「本質」とは

公開 : 2023.12.03 18:05

ルノー・トゥイージー

現代的なクルマで、我々の要求に合うものとは? これには頭を悩ませ、最終的に同僚マット・ソーンダースとマット・プライヤーに助けを求めた。

スズキスイフト? 昔ほど面白くない。ベーシックなフォードフィエスタ? 十分ではない。スズキ製エンジン搭載のケータハム130なら最高だったが、もう製造されていない(本稿執筆時点)。モーガン3ホイーラーが妥当だ、と2人は言った。「それか、ルノー・トゥイージーだね」

ルノー・トゥイージー
ルノー・トゥイージー    AUTOCAR

素晴らしい提案だ。ルノーが奇抜なEVを出して以来、わたしは一度も乗っていない。確かに、電気モーターの出力はわずか17psで、上限の100psをはるかに下回っている。

最近はEVの世界でさえパフォーマンスにこだわるようになってきているが、トゥイージーの最高速度はわずか80km/hだ。今の時期、1回の充電で走行できる距離は50km。この限られた最高速度と短い航続距離を持つトゥイージーは、街中が最もくつろげて楽しい。

乗り心地は特にスムーズではないので、道路の整備状況がそれほどひどいものでなければ、もっと楽しいだろう。スキニーなタイヤ、ちょっと奇妙な感触のステアリング、そしていつもとは違う運転視点が、楽しいドライブを演出する。

カシュート・スペシャル

さて、この小さなマシンは本当に度肝を抜かれる。カシュート・スペシャル(Cassutt Special)と呼ばれる本機は、1951年に航空会社TWAのパイロット、トム・カシュート氏によってエアレース専用に設計された。

小さな胴体は鋼管製のスペースフレームを布で包んだもので、主翼は木製で、スプルース合板が貼られている。搭載エンジンはコンチネンタル0-200で、200立方インチ(3.3L)の空冷フラット4で固定ピッチの木製プロペラを駆動する。

カシュート・スペシャル
カシュート・スペシャル    AUTOCAR

このシンプルなエンジンの出力は100psと控えめで、今回取り上げるにふさわしい。機体重量はわずか276kgである。

実際に飛ばしてみる。カシュート・スペシャルの巡航速度は290km/h、VNE(超過禁止速度)は400km/hとされる。低抵抗かつ軽量の機体であれば、100psでこの性能を発揮できるのだ。これはすごい。

閉所恐怖症の人は、カシュート・スペシャルを好きになれないだろう。コックピットは小さく、「着る(wear it)」という表現がぴったりだ。操縦は単純明快だが、着陸はそう簡単ではない。難点は160km/hでアプローチしなければならないことで、これは大半の軽飛行機やスピットファイアよりも速い。

カシュート・スペシャルは有名な米ネバダ州のリノ・エアレースで大成功を収めている。レーシングカーを所有するなら、たとえジャガーDタイプのように公道走行が可能なものであっても、サーキットに持ち込んで楽しむ必要がある。カシュートのようなマシンでは、その必要はない。完全な曲技飛行が可能なので、晴れた日にループやロールをして興奮を味わうことができる。

さらに楽しいことに、300km/h以上で谷間を駆け抜け、ジェット機のパイロットになったような気分も味わえる。合法的にね。なにより、機体の性能を100%発揮できる。マクラーレン720Sのポテンシャルの何%を公道で使えるだろうか? せいぜい30%程度だろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    コリン・グッドウィン

    Colin Goodwin

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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