フェラーリ vs アストン マーティン ドライバーズSUV頂上対決 プロサングエはDBX707を超えるか(1)
公開 : 2023.12.09 09:45
走りのクラス王者として評価されるDBX707
鋭敏な身のこなしを叶える後輪操舵システムは、812 コンペティツィオーネの派生版。トルクベクタリング機能は、SF90 ストラダーレ由来だという。SUVでありながら、落とし込まれた技術は間違いない。
とりわけ注目したいのが、サスペンション。マルチマチック社製のダンパーが、独立して超高速で可変するため、アンチロールバーを不要としている。
電圧48Vで稼働するモーターと3枚のギアで、ダンパーのロッドが極めて正確に制御される。カートリッジ内のフルードは、冷却機能も果たすとか。このダンパーの価格は非公表だが、1本数万ポンド(数100万円)はするだろう。
いずれも、技術は確かなものばかり。とはいえ、それがドライビング体験で必ずしもプラスに働くとは限らない。
対するアストン マーティンDBX707を、AUTOCARでは走りのクラス王者として評価してきた。自然で直感的な操縦性が、操る楽しさを形成している。スタイリングもダイナミックだ。
DBX707も、独自に開発されたプラットフォームを基礎骨格とし、革新的な成り立ちにある。メルセデスAMG GT ブラックシリーズ譲りとなる、油圧ブッシュがサスペンションに組まれ、2基の高速ターボが4.0L V8エンジンに組まれている。
電子制御のリアデフは、AMG GT 63 S 4ドアクーペ由来。アクティブ・アンチロールバーとマルチチャンバー・エアサスペンションは、電圧48Vで制御される。ブレーキディスクはカーボンセラミックで、ボディにはエアロキットをまとう。
大きなフォルクスワーゲン・ゴルフRのよう
最高出力は707psに達し、最大トルクは4500rpmから、91.6kg-mが湧き出る。プロサングエは72.8kg-mとやや劣り、発生回転数も6250rpmと高い。
車重は、DBX707の方が少し重い。87Lのハイオクで満タンにすると、2278kgある。プロサングエは、100Lで満タンになり2247kgだ。0-100km/h加速は、3.1秒対3.3秒でDBX707の方が鋭い。最高速度は310km/hで並ぶ。
スコットランドのギャロウェイ・フォレストパークを貫くA712号線で、DBX707はすぐさま本領を発揮する。スーパーサルーンのような落ち着きの中で、驚くほど軽く、望ましい手応えを生むステアリングホイールを操る。
このステアリングラックの印象は、アルファ・ロメオ・ジュリア GTAと似ている。ボディロールは小さくないものの、しっかり制御されている。コーナーを巡るほど、罪深い喜びへハマっていく。
4.0L V8ツインターボが繰り出す、並外れたトルクにも夢中になる。右足へ力を込めると、笑ってしまうほど即座に、91.6kg-mが放出される。爆発するように。
加速は嵐のよう。フロントタイヤが僅かに傾いているだけで、リアタイヤはスライドしかける。知的なアウディRS Q8とは違ってワンパクさを隠さないが、操縦の調整域はSUVとしては例外的に広い。
2278kgと707psある、大きなフォルクスワーゲン・ゴルフRのように楽しめる。好きにならずにいられない。
インテリアも素晴らしい。インフォテインメント・システムは最新とはいえないが、内装は柔らかなレザーで包まれ、外光がふんだんに降り注ぎ、空間的にも余裕がある。
この続きは、フェラーリ vs アストン マーティン プロサングエはDBX707を超えるか(2)にて。
画像 ドライバーズSUV頂上対決 フェラーリ・プロサングエ アストンDBX707 812 コンペティツィオーネとDB12も 全126枚