ポルシェ911 詳細データテスト 精密さ極まるシャシー レースカー並みの空力 積載能力はほぼ皆無
公開 : 2023.12.02 20:25 更新 : 2024.02.12 17:30
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
992世代のGT3 RSはイノベーション満載だが、GT3より重いRSというのはこれがはじめてだ。ヴァイザッハパッケージを装着したテスト車は、スペック表の上ではGT3より15kg重い。しかし実測では、カーボンバケットシートとセラミックブレーキを備えるGT3のクラブスポーツパッケージを45kg上回った。
ワイドボディに拡大されたトレッドとホイール、アクティブエアロの電動アクチュエーターを上乗せしたことを考えれば、その差はさほど大きくない。それでも、重くなっているのは厳然たる事実だ。
とはいえ、ボディの重量増は可能な限り抑えられていて、その理由はカーボンFRPを広範囲に使用したことにある。もともとGT3はカーボンボンネットを備えているが、RSではドアやフロントフェンダー、ルーフ、エンジンカバーもカーボンで、ヴァイザッハパッケージではリアアクスルにもカーボンパーツを使用している。
パワートレインは強化されている。自然吸気の4.0Lフラット6は、よりホットな設定のカムにより510psから525psへパワーアップ。また、専用スロットルボディを採用し、最高回転数は9000rpmに達する。
トランスミッションは7速DCTのみで、GT3に設定されるMTは用意されない。これは、RSがパフォーマンスの追求を徹底するモデルだからだ。
サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンク。延長されてドロップシェイプを描くフロントのリンクは、空力性能を最適化され、ダウンフォースを40kg増加している。全体で見ると、最高速度ではマクラーレン・セナを凌ぐ860kg、200km/hでは409kgを発生する。リアのカーボンスタビライザーは、GT3よりガッチリしたものとなる。
空力パッケージは、1500回以上のシミュレーションと、250時間に及ぶ風洞実験の結果だ。その礎になっているのは、数十年にわたりトップカテゴリーのモータースポーツで蓄積してきた、レース用911でのダウンフォース獲得の知見だ。コンセプトの中心にあるのは、車体前部のSダクトだ。
ラジエーターは小型の3基の代わりに、傾斜した単体ユニットを装備。それが通常なら荷室として使うフロントのスペースを占領する、レースカーの911RSRやGT3 Rにも見られるレイアウトとなった。
これにより、ヴェンチュリトンネル内のアクティブエアロブレードを設けるスペースが稼ぎ出せた。たった0.3秒で最大80度可変するそれは、フロントアクスルの荷重を劇的に変化させるうえ、ブレーキ冷却も最適化する。リアディフューザーはほぼGT3そのままだが、RSは床下全面にパネルが張られる。
予期せぬ挙動が出た際には、ドライバーは電子制御ダンパーを伸び/縮み両側ともコクピットで調整できる。LSDの効き加減も同様だ。