スマート・フォーツー・カブリオ・ターボ
公開 : 2012.12.26 16:51 更新 : 2017.05.29 18:43
マイルドハイブリッドが登場してからはモノグレードに集約されて、このままカルトカーとして徐々にフェードアウトしてくのか……とも思えたスマートだが、そうではなかった。今年5月のマイナーチェンジを機に、従来の“mhd(=アイドルストップ付き自然吸気モデル)”を3グレードにまで拡大、そのうえにターボを追加、さらにはいかにも一般的なニュースになりそうな電気自動車仕様の“ED”を追加した。というわけで、現在のスマートは合計6モデルの一大シリーズに復活。しかも最も安価なフォーツー・クーペmhdは従来比25万円値下げの159万円。スマートは再び日本市場を攻略する。
メルセデスの新車が一堂に集まった今回の試乗会場に持ち込まれたスマートは2種類。フォーツー・カブリオ・ターボとEDである。オープントップのカブリオは、今回からターボのみとなっている。ちなみに、どうでもいいことだが、われわれは別項のG65AMGの次にこれに乗った。もともとがコロンと小さく、当然ながら車重も軽い(ターボでも850kgしかない)スマートである。71psのNAでも動力性能そのものに不足はなかったから、そこにあえてターボであある。「もしかして、これまた、とんでもない暴れん坊なのか?」と、なにせこっちはG65AMGの次に乗るものだから、12気筒Gクラス同様の動力性能が突出したカルトカーを想像してしまった。
しかし、それはまったくのカンちがいだった。スマートターボは1.0ℓ3気筒をそのまま過給するもので、84psという最高出力はNA比で約15%、12.2kgmの最大トルクは同じく3割近い上乗せで、体感的にも明らかに力強くなっている。ただし、もともとが静的軸重でも加速時にも駆動輪にたっぷり荷重がかかるRRレイアウトなので、トラクションは十分である。エンジンが過剰な兆候はほとんど感じられない。
よく考えれば1.0ℓ過給で84psだから、エンジンじたいは極端なハイチューンでもなく、パワーデリバリーもあくまで穏やかで、変速時のスロットル制御がうまくなったのか自動M/Tの変速ショックもこれまで同様か、従来のNAよりおとなしくなったように感じるくらい。トルクに余裕があるために、ごく普通に走るなら、スロットル開度は小さくなる。よって、自然とエンジン回転は低く、変速頻度も減る。また、ターボではアイドルストップ機構も省かれる。というわけで、少なくともドライバビリティや乗り味の洗練度では、ターボはNAよりずっとマトモである。
また、パワーアップに合わせて、ターボはタイヤサイズも異なる。具体的には前後ともNAより20mm太い、前175/後195幅となるが、フロントタイヤが太くなった効能が大きい。NAではどうしてもキッチリと荷重移動しないとコーナリングパワーが滑らかに出にくく、交差点でもちょっとしたコツが必要だった。その点、フロントタイヤ自体の能力が上がったターボは、なんの気づかいもせず、FFに慣れたいつもの運転で問題なくきれいに曲がる。もちろん、限界領域に近づけば、ターボなりのクセや気難しさは出てくるだろうが、スマートでそういう走りをすること自体をオススメしない。限界の7〜8割でとどめた走りをしているかぎり、運転しやすく快適なのはターボだ。