新型スズキ・スペーシアが軽3強の中で注目なワケ NAとターボで試乗・検証

公開 : 2023.12.08 20:25

国内各社のスーパーハイト軽が続々とモデルチェンジした2023年でしたが、先のジャパン・モビリティショーでコンセプト展示されたスズキのスペーシアもついにフルモデルチェンジで登場。今回はNAとターボ、それぞれを公道で試乗。注目すべき点を検証していきます。

スーパーハイト市場とスペーシア

この1年ほどは軽スーパーハイトワゴン市場が活性化している。今年2023年は4月にミツビシ・デリカミニが発売され、ニッサン・ルークスもマイナーチェンジでクオリティをアップ。10月にはホンダ N-BOXが3代目にフルモデルチェンジ。そして11月には、スズキ・スペーシアも3代目にフルモデルチェンジされた。

昨年の2022年をふり返っても、夏にスペーシア・ベースが追加設定され、秋にはダイハツタントがビッグマイナーチェンジと車種追加(タント・ファンクロス)されたから、軽スーパーハイトワゴンのほとんどのモデルが、この期間で刷新されている。

スズキ・スペーシア・ハイブリッドX(コーラルオレンジ・メタリック+ソフトベージュ2トーンルーフ)
スズキ・スペーシア・ハイブリッドX(コーラルオレンジ・メタリック+ソフトベージュ2トーンルーフ)    上野和秀

日本を含めて世界的にSUVブームが続いてるが、日本では軽スーパーハイトワゴンも大きなムーブメントになっていることは間違いない。

話をスペーシアに戻そう。クルマ好きのオートカー読者ならご存じのとおり、軽スーパーハイトワゴン市場では、ホンダ N-BOX、ダイハツ・タント、スズキ・スペーシアが「ビッグ3」を形成している。だが、2023年1-9月の新車販売台数では、N-BOXが16万7664台(先代モデル)、タントが11万5817台、そしてスペーシアが9万340台(先代モデル)。絶対王者的なN-BOXは先代のモデル末期まで高人気を持続し、タントやスペーシアに水をあけている。

N-BOXを追うかのようにフルモデルチェンジされた新型スペーシアは、絶対王者に迫れるか。短時間ではあるが試乗の機会を得たので、ファーストインプレッションを報告しておこう。

快適性と予防安全装備を向上

新型スペーシアの実車は、事前撮影会やジャパン・モビリティショー(ここではコンセプトの参考出品だったが)でも見ていたが、あらためて路上で他のクルマの中で見ても「スペーシアだ!」とすぐに分かる。

「スーツケース」から「大容量のコンテナ」にデザインモチーフを変え、ボディサイドには大胆なビード形状やプレスラインを入れ、C-Dピラーのデザインはかなり変更されている。それでも遠目からでもスペーシアと分かるスタイルだ。

スズキ・スペーシア・ハイブリッドX(コーラルオレンジ・メタリック+ソフトベージュ2トーンルーフ)
スズキ・スペーシア・ハイブリッドX(コーラルオレンジ・メタリック+ソフトベージュ2トーンルーフ)    上野和秀

標準モデルの温和な顔つきや、カスタムのクールな表情が継承されているからだろうか。このあたりは、ボディ形状がほとんど変わらないスーパーハイトワゴンで、それぞれのアイデンティティを主張する各メーカーの腕の見せどころといえるだろう。

インパネまわりのレイアウトは従来型から大きく変わってはいないが、デザインは洗練された。デジタル化されたスピードメーターやオプションのカーナビなどの視認性は良く、スイッチ類も操作しやすいものだ。

ますは標準モデルから。今回の試乗会場は山梨県の富士吉田市がベース。道はけっこうアップダウンが多く、また路面が荒れているところが多い。非力なノンターボの軽自動車を試乗するには、シチュエーションが少し酷であったことを事前に伝えておこう。

会場を出てすぐに強めの勾配路を走るため、どうしてもエンジン回転数は高めになる。逆に下り坂ではエンジンブレーキを効かせるために、やはりエンジンが回ってしまう。したがって、それなりにノイズは高まるが不快なレベルではなく、この手のモデルとしては平均的といえる。

乗り心地を改善させたと開発者が謳うだけに、荒れた路面でも路面からの突き上げなどは抑えられている。カメラマンに運転を代わってもらいリアシートにも乗ってみたが、その印象は変わらなかった。環状骨格構造などによるボディ剛性の高さも感じさせてくれる。

小回り性の良さは、相変わらず小気味良い。スズキの軽自動車に共通のロック・トゥ・ロックこそ大きめだが、狭い道でもスパッとUターンが可能だ。街中の狭い道や、スーパーの駐車場などで車庫入れをするときなどに重宝する。

新型スペーシアのウリのひとつである「マルチユースフラップ」は、なかなか便利だ。クルマに乗ると、リアシートにカバンや上着などを置く機会は多い。だが、ちょっと強めのブレーキで床に落ちたりする経験は誰にでもあろう。このリアシート前端のフラップを上向きにすれば、荷物のストッパーになる。センターアームレストも活用すれば、コーナリングなどで左右に動くことも防げる。

角度を変えれば走行中のレッグサポートや、駐車休憩中のオットマンにもなり、これはぜひとも他のモデルでも採用を検討して欲しくなるアイテムだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    篠原政明

    Masaaki Shinohara

    1958年生まれ。某自動車雑誌出版社をめでたく? 卒業し、フリーランスのライター&エディターに。この業界に永くいるおかげで、現在は消滅したものを含めて、日本に導入されている全ブランドのクルマに乗ってきた……はず。クルマ以外の乗りものもけっこう好きで、飛行機や鉄道、さらには軍事モノにも興味があるらしい。RJC会員。
  • 撮影 / 編集

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)

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