日産アリアと基礎を共有 クロスオーバーへ一変 ルノー・セニック Eテック

公開 : 2023.12.14 19:05

電動クロスオーバーへ一新した、5代目セニック 広く実用性の高い車内に上質な内装 クロスオーバーへ充分以上といえる鋭い加速 英国編集部が評価

電動クロスオーバーへ一新したセニック

日本の家族からミニバンが選ばれるように、欧州ではクロスオーバーへ支持が集まっている。ワンボックスの選択肢は減少の一途で、ルノー・セニックもモデルチェンジでバッテリーEVへ進化したのと同時に、クロスオーバーへ改められた。

ボディサイズは、全長4470mm、全幅1864mm、全高1571mm。日産アリアより約100mm短く、約90mm低い。ルノーは新しい形のファミリーカーだと主張し、それに特化した中身を備えるという。

ルノー・セニック Eテック・ロングレンジ・アイコニック(欧州仕様)
ルノー・セニック Eテック・ロングレンジ・アイコニック(欧州仕様)

主観的な印象だが、フロントマスクは、同時期にリリースされたプジョーE-3008へ似ているような気がする。ルノーのエンブレムは、これまでになく大きく見える。

フロントガラスは強く寝かされ、リアガラスはスリム。モダンなスタイリングながら、視認性は多少犠牲になっているかもしれない。

基礎骨格は、日産アリアやルノー・メガーヌ Eテック・エレクトリックと同じ、CMF-EVプラットフォーム。フロントアクスル側へ永久磁石同期モーターを搭載する前輪駆動で、四輪駆動は予定されていない。

最高出力は、コンフォートレンジで169ps。今回試乗したロングレンジでは、218psを発揮する。

駆動用バッテリーは、60kWhか87kWhの容量を選べ、いずれもニッケル、マンガン、コバルトを正極に用いた三元系と呼ばれる高密度なもの。航続距離は前者の容量で429km、後者で624kmが主張される。

英国へ導入されるのは、87kWhのみ。価格は約4万ポンド(約740万円)からに設定されるようだ。

広く実用性の高い車内 上質なインテリア

クロスオーバーへ一新しても、荷室容量は545Lとワンボックス並みに広い。テールゲートを開くと、フラットでスクエアな空間が現れる。床下には、充電ケーブルをしまえる収納も用意されている。

床面の位置が低く、40:20:40で分割するリアシートの背もたれを倒すと段差が生まれてしまうが、英国仕様には高さを変えられるフロアパネルが標準で装備されるとのこと。背もたれ背面となだらかに繋がり、使い勝手は良くなるはずだ。

ルノー・セニック Eテック・ロングレンジ・アイコニック(欧州仕様)
ルノー・セニック Eテック・ロングレンジ・アイコニック(欧州仕様)

リアシート側の空間は、特に前後方向で広い。身長180cmを超える大人でも、至って快適に過ごせる。ルーフにはボタン1つで透明度を変えられるパノラミック・ガラスルーフが備わり、開放感も抜群だった。

車内のフロアはフラットで、リアシート中央も座り心地は良い。子供を3人並べても、不満は出ないはず。そのかわり、スライドやリクライニングには対応していない。チャイルドシートは、2脚固定できる。

理想をいえば、チャイルドシートは3脚固定できた方が、欧州の家族世帯には喜ばれるだろう。実用性を重視すると、やはり選択肢はワンボックスへ限定されてしまう。

運転席へ座ると、前方視界は悪くないものの、大きなサイドミラーが斜め前方へ小さくない死角を作っている。後方視界も良好とはいえない。

それでも、フロント側も空間は広い。内装素材は上質で、試乗車のアイコニック・グレードでは、部分的にレザーも用いられる。約80%がリサイクル素材だという点も、2023年にはアピールポイントになるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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