日産アリアと基礎を共有 クロスオーバーへ一変 ルノー・セニック Eテック

公開 : 2023.12.14 19:05

クロスオーバーには充分以上といえる鋭さ

ダッシュボードのデザインは、ルノー・オーストラルと似ている。中央に設えられた、12.0インチのタッチモニターが車載機能の多くを司るが、その下には独立したエアコンの操作パネルがある。実際に押せるハードボタンで、扱いやすい。

インフォテインメント・システムは、アップル・カープレイとアンドロイド・オートへ無線で対応。モニターの上部にはショートカット・メニューが常時表示され、アイコンも大きく、このクラスでは最高水準のシステムだと思う。

ルノー・セニック Eテック・ロングレンジ・アイコニック(欧州仕様)
ルノー・セニック Eテック・ロングレンジ・アイコニック(欧州仕様)

ステアリングコラムの右側から複数のレバーが伸びており、これは少し戸惑う部分。シフトセレクターとウインカー、オーディオ用のものが、それぞれ独立して飛び出ている。慣れるまでは、間違いそうだ。

確認はこのくらいにして、発進してみよう。試乗車が履いていたタイヤは、20インチのミシュラン・プライマシー。0-100km/h加速は8.4秒で、驚くほど速いわけではないものの、ファミリー・クロスオーバーには充分以上な鋭さがある。

アクセルペダルの操作に対して、リニアにパワーが生まれ、スルスルと速度が上昇。穏やかに傾ければ、滑らかで直感的に扱える。

マルチセンスと呼ばれる、ドライブモード・システムを実装。パーソナル、コンフォート、エコ、スポーツの4モードから選べ、ステアリングの重さやアクセルレスポンス、車内の間接照明の色などが変化する。

日常移動を心地良くこなせるクロスオーバー

ダンパーはアダプティブ仕様ではないものの、衝撃吸収性は良好。姿勢制御も適度に引き締まり、急激な旋回を求めると大きめのボディロールが生じるとはいえ、不安を感じるほどではない。全般的には、リラックスして長時間を過ごせる。

ステアリングホイールは、スポーツ・モードを選ばない限り軽め。反応は自然で、フロントタイヤのグリップ力も高い。

ルノー・セニック Eテック・ロングレンジ・アイコニック(欧州仕様)
ルノー・セニック Eテック・ロングレンジ・アイコニック(欧州仕様)

少し気になったのが、高速域での反応。切り始めの遊びを過ぎると、若干急に反応するように感じた。とはいえ、操る自信を大きく低めるほどではない。

回生ブレーキの効きは、3段階から選べる。発電しない完全な惰性走行も可能で、1番強くすると、ブレーキペダルを踏む必要性が大幅に減る。

かなり活発に運転すると、ブレーキの反応が若干安定しなくなるようではあったが、そんな場面は限定的。日常的な移動を心地良くこなせるだろう。

今回の試乗の限り、航続距離も褒められる。87kWhの駆動用バッテリーで、現実的に360kmから540km程度は走れるだろう。

エネルギー効率の良い、ヒートポンプ式エアコンが標準装備。急速充電能力は、DCで150kWまで。自宅の充電器として一般的なACでは、22kWまで対応する。

クロスオーバーへ一新したセニック。ライバルの多いカテゴリーながら、堅実な選択肢の1つに加えられるだろう。快適性や航続距離が他を凌駕するとはいえないが、車内の広さが生む実用性や上質なインテリアは、明確なストロングポイントになっている。

ルノー・セニック Eテック・ロングレンジ・アイコニック(欧州仕様)のスペック

英国価格:約4万3000ポンド(約795万円/予想)
全長:4470mm
全幅:1864mm
全高:1571mm
最高速度:169km/h
0-100km/h加速:8.4秒
航続距離:624km
電費:7.2km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1850kg
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
バッテリー:87.0kWh(実容量)
急速充電能力:150kW(DC)
最高出力:218ps
最大トルク:30.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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