最新車種の「弱点」突くリレーアタック 装置の販売サイト取り締まりへ 英国

公開 : 2023.12.05 18:05

どんな製品が売られているのか?

英国の車両追跡・回収会社、AXトラックの調査サービス担当ディレクターであるニール・トーマス氏は、本誌が提供した装置リストに驚きを見せた。

「以前にも、この種の装置を提供するウェブサイトを見たことがありますが、これほど詳細で、多くのメーカーや車種に適したものはありませんでした。”緊急始動用” といった商品説明は正当性を印象づけるためのものですが、お金さえあればきっと売ってくれるでしょう」

オンライン上では「緊急用」といった名目でさまざまな装置が販売されている。
オンライン上では「緊急用」といった名目でさまざまな装置が販売されている。

他にも、キーフォブをブロックして施錠を防ぐリモートキーシグナル妨害機や、警報音を “数秒で” 無効にする装置などが出回っている。

リレーのように動作し、キーレス車の「緊急エンジン始動」を可能にするというある装置は、「特殊サービスや探偵事務所のみが利用可能」と説明されている。

これについてトーマス氏は、「この装置はクルマを盗むために使われるのでしょうか? 言い方を変えましょう、わたしの知り合いがこのようなものを使ったことがあり、警察との唯一のつながりは独房で過ごしたことです」と話す。

本誌はこの製品を販売しているウェブサイトに問い合わせたが、返答はなかった。

警察の見解は?

全国警察署長協議会(NPCC)の広報担当者は、次のようにコメントしている。

「キーレス・テクノロジーの普及は、残念ながら簡単にアクセスできる装置の開発につながり、犯罪者にとって自動車を盗むことがあまりにも容易になってしまいました」

英国警察もこの問題を認識し、政府やメーカーと連携して取り組む姿勢を示している。
英国警察もこの問題を認識し、政府やメーカーと連携して取り組む姿勢を示している。

「我々は、内務省や政府と協力して、このような装置の販売に歯止めをかける方法を検討しています。また、車両を保護するための盗難防止機能やセキュリティ機能について、定期的に自動車メーカーと連携しています」

自動車メーカーの対応は?

英国の自動車メーカーであるJLR(ジャガーランドローバー)は11月、高級車のレンジローバーなどの盗難被害が急増したことを受け、2018年から2022年に製造された車両にセキュリティアップデートを実施すると発表した。

同社のエイドリアン・マーデルCEOは、「2022年の盗難記録は現在よりもはるかに悪かった。エンジニアは、車両の盗難手口に対抗し、回避し、先手を打つために、かなりの数の介入策に取り組んできました」と述べた。

英国ではレンジローバーなど高級車の盗難被害が相次いでいる。
英国ではレンジローバーなど高級車の盗難被害が相次いでいる。

英国の運転免許庁(DVLA)によると、今年3月までの1年間でランドローバーの100台に1台が盗難に遭っており、被害の大きい上位10車種のうち6車種がレンジローバー系統で、最も被害が大きかったのはヴェラールだった。このような盗難率の高さから、ロンドンではレンジローバーはほとんど保険に加入できなくなっている。

記事に関わった人々

  • ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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