鼻息の荒いM235iを目の前にすれば、まずまずな数値を持っているTTでさえも、ひ弱に感じるかもしれないが、スコットランドの人里離れた道を走らせるかぎり、TTはM235iに置いていかれることはない。

テスト車両には19インチのホイールがオプションで装着され(£450(8万2千円)の値上げ)、その他諸々のオプションがてんこ盛り(もう一度言うが、M235iのノーマル価格である£34,260(623万円)より高価な£36,150(658万円)だ)なのだが、組み合わされるギアボックスは標準の6速MTとなる。一方のM235iはオプションの8速ATが装着されているが、それでもオプションだらけのTTに比べると安価な£35,900(653万円)に落ち着いた。

最終的な価格を見てみれば、両者ともにほとんど変わらないため、ひょっとしたら互角の戦いを繰り広げるのではないかとも考えた次第だ。

M235iのボンネットに収まるのは、ターボ加給がなされるストレート6で、326psと45.9kg-mを1300rpmから4500rpmの間で発生する。

TTよりも225kg重たいにもかかわらず、ストレートを走らせればTTよりも速い。0-100km/hタイムは4.8秒(MTは5.0秒)、われわれの計測では161km/hまでも10秒前後で到達することが明らかになった。やはりM235iの方が、パワーにおいては優勢なのだ。

駆動方式はM235iが後輪駆動なのに対し、TTは4WDではなくFFである。並外れたトルクを無駄なく伝えるための、賢いデフさえもTTにはついていない。動力の観点で見れば、両者の違いによる呪縛からは解き放たれることはなさそうだ。

額面上では、予想通りTTには苦しい結果となってしまったけれど、ならばスタイリングに於いてはどうだろう。TTの内外装ともにファッショナブルないでたちは、初代からなかなか評判が良い。

先代に比べるとさほどの変化がなさそうに感じるが、それでも際立った美しさがあるし、少なくともM235iより興味深い造形と言える。ディテールは驚きや喜びに満ちているし、特に内側から外側へ流れるように光を発するリアのウィンカーなど注目すべき点は数多くある。

インテリアも同様、1億を上回る出来栄えと言えばさすがに嘘になってしまうが、いざ乗り込めば視覚的にも同価格帯でTTのレベルに達しているクルマはそうないし、言うまでもなくM235iのそれよりも高価に見える。

前方の視界もクリーンで、深いリムのステアリングの後方に低く腰を据えて着座することもできる。M235iがコンベンショナルな手法を採っているだけに、ややスポーティさを誇張しすぎだと受け取る向きもあるかもしれないが、筆者はM235iよりもワクワクすると感じた。