アウディTT vs BMW M235i
公開 : 2014.11.12 23:50 更新 : 2017.05.29 19:32
またTTのスターター・ボタンを押せば、即座に目の前の新しいTFTモニターが目を覚ます。この瞬間、ドライバーは ”新しいクルマに乗っているんだ” と言う充足感に浸れるはずだ。
仮にこのマルチ-アジャスタブル・モニターのことを悪趣味で半直感的だと感じるのであれば、M235iの従来通りのアナログ・メーターの方が受け入れやすく感じることだろう。こちらの場合は、’いつもの位置’ にレヴ・カウンターやスピード・メーターが並んでいる。しかしTTの新たな試みは、このような人々にとっても、そう悪いものではなく、なかなかの完成度であるということをどうか覚えておいていただきたい。
レザー巻きのステアリングの後ろに座った際に、同価格帯に落ち着いたにもかかわらず、こうも違うのかというほど両者の雰囲気が異なるところが最も興味深い点である。
動き出せば、TTに今までどおりの感触を期待していると驚くことになる。というのも、TTは懸命になって車重を感じさせないように配慮されており、それが動き出した直後から如実に感じられるのだ。タッチは軽く、反応の隅々まで慎重に吟味されていることがわかる。この感覚は1、2世代目にはなかったもので、TTのファンにとっては朗報と言っていいだろう。
また、アウディのエンジニアはストラットとマルチ-リンクのサスペンションの感触をよりなめらかにするだけでなく、極力シャープな方向に仕立てた。この味付けは電気機械式アシストのステアリングにも反映させており、こちらもまた軽さがあるものの、一頭地抜けた正確性と雑味のない操舵フィールを可能にしている。
230psと言えども、かなり速い。今回のテストのように山野を横断するようなコースでは右足を踏み込んだ分だけ、十分な加速を手にすることができる。面白さを通り越した速さがあるのだ。
出力こそM235iに劣るうえ、理論上トラクションも不足しているのだが、ほとんどどんな環境下でも ―狂人がM235iを操らないかぎり― TTは置いていかれることはない。たとえスコットランドの山中で見つけたウェット路面においてでもだ。
その理由は、TTの方がM235iに比べて、所作により緊張感があることと、活き活きとして、鋭敏であることが挙げられるのだが、それでいて根底にある振る舞いはさほど冒険しておらず、極めて堅実であるところが大きく影響しているようだ。
しかしもちろんこのクルマにも欠点はある。特にM235iと比較すると、その欠点は以下の3つに大別される。
そのうちの1つ目。先に記したとおりサスペンションにはかなりのチューニングが施されているにもかかわらず、少なくともM235iと比べた際には ’完璧な出来栄え’ とは言い難い。