エンジン車は「救命胴衣」 東欧ダチア(DACIA)が電動化に時間をかける理由 EVには消極的?

公開 : 2023.12.06 06:25

・ルノー傘下のダチア、新型EVの投入にはやや消極的な一面も。
・各国の市場需要に対応。電動化の割合を見ながら移行する。
・内燃エンジン車は「収益源」であり、グループの「救命胴衣」でもあるとCEOは語る。

グローバル市場の需要次第

クルマの電動化が進む欧州だが、一部のメーカーはEV(電気自動車)への移行に慎重だ。環境規制など周囲からの圧力が強まる中、消極的ともとれる姿勢を見せているのはなぜなのか。

先日、ルノー・グループ傘下でルーマニアの自動車メーカーであるダチアは、コンパクトSUVの新型ダスターを発表した。モデルとしては第3世代にあたり、今回初めてハイブリッドも導入したが、バッテリーEV版は計画されていない。

新型ダスターにはバイフューエル車とガソリン車、ハイブリッド車が用意される。
新型ダスターにはバイフューエル車とガソリン車、ハイブリッド車が用意される。    ダチア

ダチアが現在販売しているEVは、Aセグメントに属するスプリングの1車種のみで、新型車に関する情報も乏しい。同社のドゥニ・ルヴォCEOは本誌の取材に対し、ダスターのEV版の投入時期は「わかりません」と答えた。

ルヴォCEOは、新型ダスターが今後8年(モデルサイクルの周期)ほど販売される可能性があることを考えると、そうした決定はまだずっと先のことだと説明する。市場には、内燃エンジン車を2030年代まで受け入れ続けるのに十分な「余地」があるという。

「(親会社である)ルノーは、自動車の電動化を迅速かつ大規模に進めています。ダチアももちろん、最終的な目標を理解し、そこへ向かいます。しかし、それほど早くは進まないでしょう。ダチアはモビリティ市場において、常に代替手段を提供しています」

また、内燃エンジン車はダチアの「主要な収益源(bread and butter)」であり、ダチアはルノー・グループにとって「この不確実な環境における」「救命胴衣」であるとした。

「できるだけ早く電動化を進めるという競争ではありません。もしかしたら逆のことも言えるかもしれません。この2つが同時に動いているのです。わたし達はただ一貫性を保たなければなりません」

「もちろん、何もしないわけではありません。そんなことは不可能です。わたし達は段階的に脱炭素化を進めており、まず最初にLPGを導入して炭素を10%削減し、市場の要求と圧力を見ながら、HEV(ハイブリッド)に移行します」

ルヴォCEOは「ある時点で完全な電動化を終える」と述べたが、これは個々のモデルサイクルやグローバル市場の需要次第だという。例えば、ハッチバック車のサンデロは2028年頃にフルモデルチェンジの時期を迎える。

「2028年から2034年の間に内燃エンジン専用車を欧州で発売するとは、誰も想像できないでしょう?」

「同時に、電動化の割合は100にはほど遠いでしょうし、ダチアは欧州以外の国、つまりトルコ、モロッコ、北アフリカ、ラテンアメリカ、インドにも進出しています」

「ダチアはバイエネルギー、すなわち電動版と内燃エンジン版の2つを提案しているのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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