サーブの血を引く電動セダン 量産化へ一歩前進 Nevs、カナダ企業へプロジェクト売却
公開 : 2023.12.06 06:45
・サーブ(Saab)の後進と言えるNevs社が、新型EVのプロジェクトを売却。
・サーブ9-3にも似た長距離電動セダン「エミリーGT」まもなく生産開始へ。
・4基のインホイールモーターで合計出力490ps。
Nevsの電動セダン、カナダ企業に救われる
スウェーデンの自動車メーカーであるNevs(ナショナル・エレクトリック・ビークル・スウェーデン)は、新型EVの量産プロジェクトをカナダの新興企業EVエレクトラに売却した。
サーブ出身のエンジニアが開発したエミリーGTは、1回の充電で1000kmの航続距離を謳う電動セダンで、今年4月に初公開された。今回のEVエレクトラによる買収は、市販化に向けた一歩前進と言えそうだ。
Nevsは、2012年にサーブが破産した際にその資産の多くを取得した。2019年には中国企業のエバーグランデ・グループ傘下に入るが、EVの生産が進まず、また新たな売却先も見つからずに休眠状態となっていた。
Nevsのニーナ・セランダーCEOは声明の中で、EVエレクトラによる開発プロジェクトの買収について、「共有する夢の実現」であり「意味深い瞬間」であると述べた。
今回、EVエレクトラが獲得したのは、エミリーGTと自動運転ポッドのポンズ(Pons)の2車種。発表によると、EVエレクトラはトルコの工場で間もなく生産を開始するという。同社の創業者兼CEOのジハード・モハマッド氏は、次のようにコメントしている。
「わたし達は再び、トロルヘッタン(スウェーデンの旧サーブ本社所在地)から自動車を送り出すことになります」
「開発から量産に至るまで、全面的にバックアップする必要性を十分に認識した上で、今回の買収を行いました。わたしは自社生産と強力なバランスシートを固く信じています。また、トロルヘッタンには当社のビジョンを実現できる人材がいると信じています」
「ポンズとエミリーのプロジェクト買収は、イノベーションと持続可能性を追求する上で極めて重要なマイルストーンとなります。この旅に乗り出すことができてワクワクしています」
航続距離は1000km? エミリーGTとは
Nevsが開発したエミリーGTは、メルセデス・ベンツEQSやテスラ・モデルSに匹敵する4ドア、5人乗りのEVである。175kWhという大容量のバッテリーを搭載し、最長1000kmの航続距離を誇る。
他にも、140kWhまたは105kWhバッテリー搭載モデルや、11kWのワイヤレス充電機能の実装も当初の計画に含まれていた。
エミリーGTは4基の電気モーターを各車輪に内蔵し、合計出力490psを発生。0-100km/h加速は4.6秒。ホイールとアルミニウム製ブレーキディスクの間にドライブユニットを挟み込み、トルクベクタリングをより細かく制御しているという。そのおかげで、ステアリングを操作しなくても曲がることができる。
インホイールモーターに起因するバネ下重量の増加による乗り心地への悪影響を打ち消すため、アクティブダンパー付きのエアサスペンションシステムを装備している。
高性能モデルも計画されており、最高出力は662ps、最大トルクは224kg-mとなる予定だった。0-100km/h加速のタイムは3.2秒に短縮されるという。
開発・量産を引き継ぐEVエレクトラは、こうした仕様を変更するかどうかはまだ明らかにしていない。
サーブ9-3およびサーブ9-5の最終型を彷彿とさせるスタイリングは、無名のイタリア人デザイナーによって描かれ、サーブ出身デザイナーによる手が加えられたと言われている。
画像 サーブ9-3、9-5に酷似する航続距離1000kmの電動セダン【まもなく生産開始? NevsエミリーGTを写真で見る】 全10枚