「楽しさと危険」は表裏一体 プジョー205 vs シトロエンAX(1) フランス版ミニ・クーパー
公開 : 2023.12.23 17:45
1980年代に黄金期を迎えた、小さなホットハッチ ホモロゲーション仕様のプジョー205 ラリー 軽さを追求したシトロエンAX GT 英国編集部が比較試乗
1980年代を代表するホットハッチ2台
1980年代のホットハッチは、本当に小柄で素速かった。数10年を経て再び試乗してみると、現代のクルマの変化ぶりに驚かされる。一周回って、当時以上の魅力を感じるのは筆者だけだろうか。
その頃の自動車ジャーナリストは、すばしっこい走りを称賛した。機動性の高さは、余計なモノをまとわない軽さから生まれていた。乏しい安全性と、表裏一体といえた。
胸のすくような走りは、事故のリスクが高いことも意味した。その事実を問われた企業は考えを改め、ボディは硬く重くなり、シャシーはアンダーステアへ調整された。その結果、現在まで生き抜くことができた少数は、一目置かれるクラシックになった。
今回比較した2台は、1980年代を代表するホットハッチだ。共通する面白さを備えるが、中身は異なる。ステランティス・グループの前身、PSAグループとして2社が同じ傘下へ入り、コンポーネントの多くを共有するものの、別々にデザインされている。
その後、プジョー205よりひと回り大きい306は、シトロエン・クサラのベースになった。シトロエンAXの後継モデル、サクソは、プジョー106と兄弟モデルになった。
ホットハッチで特に重要なことは、軽さだろう。シトロエンAXの車重は、発売当時640kgしかなかった。最高出力の高いエンジンの獲得に合わせて、改良が加えられたAX GTでも、722kgに留めていた。
ちなみに、1275ccエンジンを積んだオリジナルのBMCミニ・クーパーも、約650kg。現行のミニ・クーパーは、1.3tを超えている。
フランス版ミニ・クーパー的な内容
プジョー205の発売は、1983年。フロントはマクファーソン・ストラット式だが、リアにはトーションバーとトレーリングアームを組み合わせ、ダンパーを水平に組んだ特殊なサスペンションを備える。後に、PSAグループのプラットフォームへ進化した。
エンジンは、シングル・オーバーヘッドカム(SOHC)の自然吸気・直列4気筒で、翌1984年には1.6Lの205 1.6 GTIが登場。ハッチバックとして完成度は高く、1990年に、1980年代を代表する「カー・オブ・ザ・ディケイド」へ選ばれている。
同時期のシトロエンも小さなホットハッチ作りには熱心で、1985年にAXの前身モデル、ビザへGTiを設定。205 1.6 GTIと同じ、1580ccのインジェクション・ユニットで武装した。
しかし、1986年にまったく新しいAXを発表。1360ccのオールアルミ製TU3型4気筒エンジンを搭載し、ツインチョーク・キャブレターを載せ、フランス版ミニ・クーパーといえる内容に仕上がっていた。
1988年に追加された、AX GTの最高出力は86psと控えめに思えるが、オリジナルのミニ・クーパーSより10psも高かった。ボディのスチール材は厚くなく、樹脂製のテールゲートを採用。そもそもサイズが小さく、軽い車重には不足ない馬力といえた。
高性能仕様として、205 ラリーと同じ1.3Lエンジンにツイン・キャブレターを搭載した、AX スポーツが1991年に登場。タイトなエンジンルームへ押し込むべく、吸気マニフォールドは専用設計で、エアフィルターも小さく、馬力は若干落ちていたが。