オーバーステアか四輪ドリフトか プジョー205 vs シトロエンAX(2) 平凡な小型車から最高の面白さ

公開 : 2023.12.23 17:46

助手席に1人座っただけで動きが鈍くなる

キャブレター・エンジンだから、温度によって始動性が悪くなる。アナログな時代のホットハッチだという実感を高め、ますます好きになる。

車内空間は、205 ラリーと同じく見た目以上に広い。AXなら、大人4名が快適に過ごせるだろう。しかし、それでは走りの魅力が大いに削がれる。助手席に1人座っただけで、重さは約10%増し。明らかに動きが鈍くなる。

シトロエンAX GT(1988〜1992年/英国仕様)
シトロエンAX GT(1988〜1992年/英国仕様)

この時代のホットハッチは、平凡なコンパクトカーから最高の面白さを引き出した、黄金期にあった。ドライバーには、一定の信頼がおかれていた。それでも、楽しいと絶賛された特性は、危険だという評価へ変化していった。

クラシックカーとして時効が成立したような今では、再びそれが魅力になっている。205ラリーへ最も近いシトロエンは、1991年限りのAX スポーツだという人もいる。数は極めて少なく、出てくれば相当にラッキーだ。

今回の比較では、優劣を付ける目的はないものの、205 ラリーが優れることは間違いない。ピニンファリーナ社が手掛けたスタイリングと相まって、急速にコレクターズ・アイテム化してもいる。

数年前の英国でも、TU24ユニットを積んだ本物の205 ラリーは11台しか存在しなかった。その中の数台は、サーキットやラリーステージで、まだ現役として駆け回っているようだ。

同時に、AX GTにも感銘を受けた。現実世界では同等に速く、乗り心地は快適。オリジナル状態を探し出すのは、205 ラリー以上に難しいかもしれないが、筆者も1台、ツインキャブレターのGTが欲しくなってしまった。

撮影:マルコム・グリフィス
※この記事は、2017年1月に執筆されたものです。

プジョー205 ラリーとシトロエンAX GT 2台のスペック

プジョー205 ラリー(1987〜1992年/英国仕様)

英国価格:7810ポンド(新車時)
生産数:3万111台
全長:3708mm
全幅:1572mm
全高:1295mm
最高速度:189km/h
0-97km/h加速:9.6秒
燃費:10.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:790kg
パワートレイン:直列4気筒1294cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:103ps/6800rpm
最大トルク:12.2kg-m/5000rpm
トランスミッション:5速マニュアル(前輪駆動)

シトロエンAX GT(1988〜1992年/英国仕様)

英国価格:7399ポンド(新車時)
生産数:240万台(AX合計)
全長:3531mm
全幅:1600mm
全高:1340mm
最高速度:180km/h
0-97km/h加速:9.2秒
燃費:11.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:722kg
パワートレイン:直列4気筒1360cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:86ps/6400rpm
最大トルク:11.8kg-m/4000rpm
トランスミッション:5速マニュアル(前輪駆動)

プジョー205 ラリー(1987〜1992年/英国仕様)
プジョー205 ラリー(1987〜1992年/英国仕様)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ポール・ハーディマン

    Paul Hardiman

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

プジョー205 vs シトロエンAX 比較試乗の前後関係

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