「ロールス・ロイスの起源」は電気にあった 最新スペクターへ試乗 創業者の聖地を巡礼(1)

公開 : 2023.12.18 19:05

11:35 見事な快適性を高速道路で確認

堂々とした容姿のスペクターが、洗練されたマナーでM1号線を北上する。ベッドフォードシャーを過ぎ、ロイスが生まれたハンティンドンシャーも既に後方だ。リニアモーターカーのように、滑らかに突き進む。

エアサスペンションは、鋭い隆起部分を低速で通過すると、減衰力が足りず振動を残すことがある。しかし高速域になると、宙へ浮いたようにスムーズ。風切り音や、タイヤからの転がり音は殆ど聞こえない。

ロールス・ロイス・スペクターと筆者、マット・ソーンダース
ロールス・ロイス・スペクターと筆者、マット・ソーンダース

静けさに飽きたら、「ロールス・ロイス・ノイズ」をオンにできる。その人工音は説明が難しいのだが、何匹もの大きなハイイログマが、優しく低い唸り声を発しているような、そんな響きだ。

ロールス・ロイスのグランドツアラーとして、卓越した上質さは健在。ファントムより加速は僅かに鋭く、姿勢制御はシームレス。ステアリングホイールの重み付けは理想的で、自然な敏捷性も備えている。

一般道では、満たされるほど速く平静。ボディはワイドで大きさを常に感じるが、四輪操舵システムを実装し、印象的に正確で機敏。ドライバーズカーの1台だといっていい。

同時に、眼を見張るほど優しく穏やか。外界と見事に隔離された快適性こそ、ブランドの強みでもある。以前のロールス・ロイスと同様に、しっかり備わっている。

ロールス・ロイス初の生産工場跡地へ

最初の目的地は、グレートブリテン島中部、ダービーにあるナイチンゲール・ロード。ここには、ロイスが初めて建設した自動車工場が存在した。今でも、ロールス・ロイスの航空部門が付近へ拠点を構えている。トヨタやJBL、ボンバルディアの工場もある。

1908年に創業を始め、2008年に閉鎖された。敷地の大半が宅地へ転用されつつあるが、通りへ面した建物の一部は残り、会議室やイベント空間として一般へ開放されている。「ROLLS-ROYCE LIMITED」のロゴを背景に、自撮りするのも悪くない。

ロールス・ロイス・スペクターと筆者、マット・ソーンダース
ロールス・ロイス・スペクターと筆者、マット・ソーンダース

住宅の建築が進む跡地でスペクターを撮影していると、早めの昼食を取っていた数名が歩いてくる。「道に迷ったんですか?」と、親切な女性が声をかけてくれた。ロールス・ロイスは別の場所ですよ、と。

この続きは、最新スペクターへ試乗 創業者の聖地を巡礼(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

最新スペクターへ試乗 創業者の聖地を巡礼の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事