働くクルマを「電気で再生」 ルナズの電動ゴミ収集車へ試乗 最高出力2倍 最大トルク7倍

公開 : 2023.12.17 19:15

クラシックカーの電動化を得意とする英国のルナズ社 使い込まれたディーゼルトラックをバッテリーEVへ変換 英国編集部が試乗

最高出力は2倍 最大トルクは7倍

最大トルク712.3kg-m。こんな強力なトラックが、英国の市街地を走り回ろうとしている。荷物を積まない状態で、17tの重さがあるにも関わらず、0-80km/h加速は6.0秒。実際に必要な力の、倍以上はあるそうだ。

ロンドンの北西、シルバーストーンに拠点を置き、デビッド・ベッカム氏など有力な投資家の注目を集めるルナズ・グループ。アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークルと同社が呼ぶ、電動化で再生された大型トラックのゴミ収集車が完成した。

ルナズ「アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル」電動再生ゴミ収集車(英国仕様)
ルナズ「アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル」電動再生ゴミ収集車(英国仕様)

最初に、バッキンガムシャー州へ納車されるという。今後、導入する自治体は増えていくに違いない。

この電動再生ゴミ収集車は、広大な敷地を有するルナズ・アプライド・テクノロジーズ社の工場で作られている。母体となるルナズ・グループのデビッド・ロレンツ氏と、ルノーのF1開発へ携わったジョン・ヒルトン氏によって、5年前に設立された会社だ。

同社は、英国での耐用年数、7年を過ぎたディーゼルエンジンのゴミ収集車を回収。13万km前後走ったシャシーとボディ、インテリアを完全にリフレッシュし、電動パワートレインへ換装した真新しい1台が生み出される。

搭載される駆動用モーターは、オリジナルのディーゼルエンジンと比べて、最高出力は2倍。最大トルクは7倍に達するとか。

一連のプロセスで素晴らしい点が、オリジナル部品の80%が保持されること。細部までリフレッシュされるが、製造する必要があるのは、内装の一部と電動パワートレイン程度。つまり、新しいトラックを作るのに比べて、CO2排出量を大幅に減らせる。

ベース車はメルセデス・ベンツ・エコニック

同社の技術は、ゴミ収集車だけに利用できるわけではない。汎用性の高い設計で、多様なトラックの電動化に対応するという。具体的な例を挙げることを担当者は避けたものの、年間1100台程度まで、電動再生トラックが作られる可能性がある。

現在のベース車両は、メルセデス・ベンツ・エコニック・ユーロ6と呼ばれるモデル。欧州の商用車では評価が高い1台で、本来は7.7Lの直列6気筒ディーゼルエンジンと、6速ATが載っている。

ルナズ「アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル」電動再生ゴミ収集車(英国仕様)
ルナズ「アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル」電動再生ゴミ収集車(英国仕様)

市街地を低速で走り、発進と停止を繰り返すゴミ収集車の特性上、内燃エンジンは効率的に仕事をできない。電動パワートレインにより、大幅にエネルギー効率は改善するという。もちろん、騒音は大幅に減り、排気ガスは出さない。

工場でエコニック・ユーロ6は分解され、メルセデス・ベンツが160万kmも走行距離を重ねて開発したシャシーは、2週間かけて整備される。ディーゼルエンジンは、再利用するのではなく、素材としてリサイクルへ回される。

仕上がったシャシーの中央に、駆動用バッテリーが納まる。1ユニット65.5kWhの容量のものが4基から6基、ニーズへ併せて選ばれるという。このバッテリーは、英国企業がシャシーの形状へ合わせて製造している。

バッテリーユニットは1つ570kgあるため、積載重量に影響が出る恐れがあった。しかし英国運輸省の柔軟な措置で規制が緩和され、従来どおり10tまでゴミを積めるそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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