働くクルマを「電気で再生」 ルナズの電動ゴミ収集車へ試乗 最高出力2倍 最大トルク7倍

公開 : 2023.12.17 19:15

現場スタッフの意見を車内に反映

今回、完成した1台へ試乗させていただいたが、動力性能は間違いなくたくましい。駆動用モーターの最高出力は476psと驚くほどではないが、最大トルクは712.3kg-m。ブガッティ・シロンでも、163.2kg-mに留まる。

ボディが巨大なこともあり、加速は圧倒されるほど。25%の急勾配をぐんぐん登る。内燃エンジンを積んだベース車と比べてみたが、その差は歴然だった。

ルナズ「アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル」電動再生ゴミ収集車と筆者、サイモン・ハックナル
ルナズ「アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル」電動再生ゴミ収集車と筆者、サイモン・ハックナル

航続距離も充分。実際は250km前後ながら、一般的なロンドンのゴミ収集車は、平均となる2500個のゴミ箱を回収しても、1日に24km程度しか走らないそうだ。

充電能力は、ACの22kWまでと控えめ。それでも、車庫へ戻って夜間にソケットを繋いでおけば、翌朝までに1日分の電気が蓄えられる。

ゴミ収集車の運転は、日ごろ筆者が楽しんでいるそれとは対極的。少し進んでは停まり、臭うゴミを回収し、直ぐに次の集積ポイントを目指す。大切な公共サービスの1つだが、路上での回収中は、先へ進めないことへ苛立つ後続車のドライバーもいる。

だが今回走るのは、ルナズ・アプライド・テクノロジーズ社の周辺。公園が広がり、ゴミが入ったバケツを巡る必要はない。

車内は真新しく、日々頑張られている収集車のスタッフへ喜ばれることだろう。同社のデザイナーは、実際に現場からの意見を聞き、アイデアを具体的に反映させている。

カップホルダーは5つ。シートにはヒーターが付いている。横並びで4名座るのだが、中央の2席の空間は僅かに広げられた。インフォテインメント・システムは、アップル・カープレイに対応している。

ステアリングは正確 低速域でキビキビ走る

かくして、電動再生ゴミ収集車は運転が楽しい。ステアリングコラムから伸びるレバーを回し、ZF社製の2速ATをドライブに入れる。レバーを引いてエア・サイドブレーキを解除すると、ほぼ無音で走り出す。

メーター用モニターには、速度と航続距離、電費効率の他、ブレーキや乗り心地を制御する空気圧も表示される。ダッシュボードの中央には、10.0インチのタッチモニターが2面。片方がインフォテインメント用で、他方は車載カメラの映像用だ。

ルナズ「アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル」電動再生ゴミ収集車(英国仕様)
ルナズ「アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル」電動再生ゴミ収集車(英国仕様)

タイヤはコンチネンタルで、22.5インチの扁平率80。ゴムの肉厚さと車重を考えると、ステアリングの反応は驚くほど正確。適度な重さがあり、レシオはクイックで、入り組んだ市街地や住宅地でも扱いやすそうに思える。

乗り心地も素晴らしい。アクセルペダルを踏み込むと、感心するほど活発に走る。特に低速域でキビキビと反応する能力には、大きなメリットがあるだろう。

英国では、地方自治体毎にCO2排出量を削減することが求められており、2023年末までに57台の電動再生ゴミ収集車が納車される予定だという。2024年には、200台以上が作られる計画だ。

ちなみに、1台の価格は39万5000ポンド(約7307万円)。同等の保証期間が付帯される、新車のエコニック・ユーロ6より、5万ポンド(約925万円)以上安いとのこと。しかも、製造時のCO2の排出量は小さい。

ルナズ社の事業拡大は、確実といえるかもしれない。

撮影:ジャック・ハリソン

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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