「勢力拡大中」のボルボ派生ブランド EX90の兄弟へ感動 ポールスター3へ試乗

公開 : 2023.12.30 19:05

ポールスターから3番目の量産車が登場 ボルボEX90の兄弟といえる電動SUV 2.6tを忘れる加速 ノーマルのままで運転が楽しい 英国編集部が評価

ボルボEX90の兄弟といえる電動SUV

北欧の自動車ブランドとして、ボルボから独立したポールスター。3番目の量産車、「3」が遂に発売される。アウディQ8 e-トロンやBMW iXメルセデス・ベンツEQE SUVなどのライバルに当たる、大型SUVだ。

ひと回り小さくクーペ風ボディをまとうSUVの「4」と、ポルシェタイカンへ伍する「5」、ロードスターの「6」が今後続く。最初に限定生産されたグランドツアラーの「1」はプラグイン・ハイブリッドだったが、これらはすべてバッテリーEVだ。

ポールスター3 ロングレンジ・デュアルモニター・プロトタイプ(欧州仕様)
ポールスター3 ロングレンジ・デュアルモニター・プロトタイプ(欧州仕様)

今回試乗した3は、ポールスターとして設計された初の量産モデル。1と2は、ボルボから販売される予定だったらしい。日本へ上陸していないものの、欧州や北米、韓国などで勢力を拡大しており、2024年前半に英国でも発売される。

ボルボと同じく、ポールスターも中国のジーリー・ホールディンググループの傘下にあり、両ブランドは技術的に近い関係にある。3は、3列シートを持つ大型SUV、ボルボEX90の兄弟といっていい。

プラットフォームは新開発のSPAで、ホイールベースは2985mm。駆動用バッテリーは107kWhと巨大で、急速充電能力は250kWまで対応する。一部グレードの駆動用モーターも含めて、これらはEX90と同一だ。

ステアリングホイールや、インフォテインメント用タッチモニターなども、EX90と共有。インテリアデザインの雰囲気は、北欧らしいといえるが、ボルボ的でもある。

かといって、エンブレムを張り替えただけのモデルではない。ポールスターは、よりスポーティーなSUVだと主張する。今回の試乗では、賛同できる印象を受けた。

2基のクラッチによるトルクベクタリング

筆者が向かったのは、スウェーデン南部のヨーテボリにある、ボルボのテスト施設。技術者やデザイナーへインタビューした後、ハンドリングコースを数周運転させてもらった。インフォテインメントと運転支援のシステムは、開発完了前で試せていない。

タッチモニターで稼働するソフトウエアは、ボルボEX30と基本的に同じ。実際に押せるハードボタンは少ないものの、ポールスターでは任意にカスタマイズできる範囲が広く設けられている。

ポールスター3 ロングレンジ・デュアルモニター・プロトタイプ(欧州仕様)
ポールスター3 ロングレンジ・デュアルモニター・プロトタイプ(欧州仕様)

表示されるメニューは大きなアイコンで触れやすく、階層を辿っていく必要も少ないようだ。それでも、ドアミラーやステアリングホイールの角度は、タッチモニターを介して調整しなければならない。

3列シートのEX90と異なり、3は2列シートで定員は5名。フロントシート側以上に、リアシート側の空間は驚くほど広い。

EX90と用いられる素材が異なり、内装は差別化が図られている。センターコンソールを占めるグロスブラックのプラスティック製パネルは、大きすぎて調和していないように見えた。

3の強みとなるのが、シャシーチューニング。サスペンションはツインチャンバーのエアスプリング。iXやEQE SUVなどのように、後輪操舵システムは備わらない。

リアアクスルには、トルクベクタリング機能を搭載。ディファレンシャルのかわりに2基のクラッチを採用し、リアモーターの出力を最大100%まで、片側のリアタイヤへ伝達することを可能としている。軽負荷時には、前輪駆動として走ることもできる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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