キア・ソウルEV

公開 : 2014.11.14 23:30　　更新 : 2021.03.05 21:37

キア

■どんなクルマ?

2013年にデビューしたキア・ソウルの2代目にもEVモデルが用意されることになった。まだまだEVに馴染みのない層にも安心してもらうために、キアの他のモデルと同様、バッテリーには7年間の保証がつく。

動力源をバッテリーに置き換えるために、従来の内燃機関やトランスミッション、暖房装置とはきっぱりと決別し、フロントやリアのスタイリングから構造に至るまで再設計されることになった。

ボディ・ストラクチャーの上部こそガソリン車と同じものを用いるが、Bピラーやサイドシルなどは強化されている。車両の底部には5つのクロスメンバーが新たに追加され、車両全体の剛性は従来よりも27％高められているのだそうだ。

また、これまでフロント・グリルが設えられていた部分には、新たに2つの充電ソケットが差し込めるようになり、リア・バンパーやテール・ゲートもEV専用のデザインに変更された。LEDテール・ランプも他の動力源をもつモデルとの識別点となる。

キャビンを見わたせば、ダッシュボードのデザインがEV用に変わり、質感も他のモデルよりも高められていることが分かる。また有機ELデジタル・メーターや大型のセンター・タッチスクリーンが採用され、ステアリングの形状やシフトレバーもEV専用となる。

床下に収められる27kWhのリチウム-イオン・ポリマー・バッテリーは、英国内のソケットからならば13時間で充電が可能。これに加えてキアUKは、ソウルEVを購入したオーナーにウォールボックス充電装置を提供する。こちらの装置で充電するならば5時間程度で満充電になるのだそうだ。また日本規格のチャデモ急速充電装置からも充電が可能で、この場合は33分程度で80%までバッテリーが回復するとのこと。
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キアの技術者は、ヒートポンプからヒントを得た、エネルギー消費を最小限に抑えたヒーター/クーラー・システムを開発し、任意で運転席のみのエアコンの使用も可能になった。

111psと29.0kg-mの電気モーターはシングル-スピード・トランスミッションと接続され、0-100km/hタイムは10.8秒、最高速度は145km/hに達するというのがキアの公称値。バッテリーと、上記の冷暖房システムにより、航続距離は212kmに及ぶのだそうだ。

■どんな感じ?

乗ってみたところ、静かなキャビンや、力強い加速など、典型的な電気自動車のそれと変わらないのだが、どこか時代遅れな感じがしなくもない。

仮にこのクルマが3年前にデビューしていたならば、クラスを牽引する日産リーフと互角の戦いをしていたことだろう。しかしEVのテリトリーは急速な進化を遂げ、今となってはフォルクスワーゲンe-ゴルフやメルセデス・ベンツB-クラス・エレクトリック・ドライブが大活躍中なのである。

2台のドイツ車は、室内環境や乗り心地がソウルEVよりももっと洗練されているし、ドライブトレインのマナーも優れている。残念ながら操舵フィールもソウルEVの及ぶところではないのだ。

可愛らしいルックスは、EVの能力を冷静にみつめる層にとってはさして重要ではないし、なんといってもソウルEVよりもVW e-ゴルフは£1,000(18万2千円)、B-クラス・エレクトリック・ドライブは£2,000(36万4千円)高いだけなのだ。それにBMW i3に至ってはソウルEVと数万円しか変わらない。

動力性能に加えて、見晴らしの良いドライビング・ポジションや取り回しやすい角ばったデザインなどを考慮すれば、ソウルEVの出る幕ではないとまで言うつもりはないのだが……。
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■「買い」か?

仮に電気自動車を買うことになれば、贔屓にしているメーカー一択というよりも、他のメーカーのモデルとよく見比べることになるはずだ。

そうなった時に、ソウルEVが他社のライバルと対等に渡り合っていけるとは断言できない。ほとんどのことは、そつなくこなせるのだが、悪路での乗り心地など、クラスを牽引できるほどの完成度ではないのだ。

キアの掲げる来年の予想販売台数も100から200台と控えめだし、ソウルEVを販売するディーラーも13箇所と限定的だ。政府の補助が適応された状態の£24,995(455万円)の車両価格には、バッテリー・パック、ウォールボックス充電装置、チャージマスターのアカウント、広範囲に及ぶ標準装備が含まれているものの、ルノー・ゾエや日産リーフを買う方がユーザーにとってはメリットは大きい。

ソウルEVそのものを見ればまずまずの実力があるのだが、運転して最高レベル、あるいはベスト・バリューとは現時点では言い切れない。

(ヒルトン・ホロウェイ)