メルセデス-AMG GT S
公開 : 2014.11.14 23:50 更新 : 2017.05.23 16:37
GTとGT Sの両方に最初からロッキング・ディファレンシャルは組み込まれるが、前者は従来の機構、後者は電子制御がなされることにより、トラクション・コントロールのレベルが底上げされるとのこと。
ボディにはマグネシウムとアルミニウムが使用され、マクラーレンやランボルギーニのコンポーネンツを手がけたスペシャリストである、ドイツのティッセン・クルップが生産を行う。車両重量はGTが1540kg、GT Sが1570kgとなる。
したがってGTの1トンあたりの出力は300ps、GT Sは324psとなり、1620kgのSLSに比べると前者は53ps/トン、後者は27ps/トン不足するという計算だ。ちなみに911ターボのパワー・ウエイト・レシオは311ps/トンとなっている。
■どんな感じ?
ドアを開けて、分厚いサイド・シルをまたぎ、2つのシートが並べられる素晴らしいキャビンに乗り込めば、お楽しみの時間の始まりだ。
まずはじめに、他のモデルとは明確に差別化された、いかにも現代的なインテリアに目を奪われる。あるべき所に全てのものが並べられ、その全てに本物ならではの得も言われぬ雰囲気が漂っているのだ。
シートの座面高は非常に低く、サポートは豊富。電動で調整できる範囲は非常に広い。存在感のあるダッシュボード中央には8.4インチのモニターが鎮座し、目に見える範囲ではダッシュボード中央に4つ、両サイドに2つのエアコンの吹き出し口がある。底部がフラットになっているマルチ-ファンクション・ステアリングはレーキ及びリーチ調整が可能。元々のステアリング・ポジションはほとんど水平と言っていい。
スイッチ類の多くはGT専用品となっており、主要なボタンとダイアルの仕上げは見事なもの。操作したときの重みも絶妙だ。優先順位の低いスイッチはルーフ・ライナー部分に備えけられている。
所見ではシルエットこそSLSに似ていると感じるものの、実際に乗ってみれば、すぐに両者が明確に異なっていることがわかる。
数kmほど走ったところでSLSに比べて全てのマナーが柔らかくなっていると感じはじめる。エッジは丁寧に丸め込まれ、低速域の従順さや、シフト・マナー、より正確になったステアリングがそう感じさせるのだろう。もちろん乗り心地も素晴らしい。市街地を多く走るような使用を毎日繰り返したとしても憂鬱になることはなさそうだ。
高速道路へと進みペースを上げていけば、GT Sの中核をになう ’強み’ に気付かされることになる。ガスペダルを強く踏むと、線形的にパワーが増大していき、ラグの類などが全くないのだ。これならば6.3ℓのNAでなくともいいじゃないか、と筆者は思った。
そしてこのなめらかさと柔軟さは、どの速度域でも一貫している。7000rpmのレッドラインまで回してやれば、NASCARのレース車両のような轟音とともに凄まじい加速を披露してくれる。エフィシェンシー・モードにセットすれば一変して喧騒は過去のものになるのだから、その棲み分けは驚きの一言につきる。
とんでもない実力を秘めたエンジンを後押しするのが、大幅な改良が施されたデュアル-クラッチ・トランスアクスル・ギアボックスだ。変速に迷いなどはまったくなく、特にスポーツ・プラスやレース・モードにセットした際は絶妙なギア選択を電光石火のごとくおこなってくれる。
AMGが公表したスペック・シートによるとGT Sは0-100km/hをわずか3.8秒でこなすのだそうだ。SLSに比べると0.1秒速いと言えば、その凄さをお分かりいただけるだろうか。70km/hに達すると、ボディ後方からムクリと起き上がるスポイラーの助けもあり、高速域の安定感もはるかに向上したおかげで、最高速度はなんと310km/hに及ぶとのこと。SLSが314km/hだったから、すぐそこの所まで来ていると言っていい。