フランス流の小型EV レトロ調デザインが明らかに 「ルノー5」復活へ

公開 : 2023.12.12 06:25

・来年2月に公開予定の新型ルノー5 Eテックのデザインが明らかに。
・直線基調のレトロ路線。ボンネットには充電インジケーター。
・リアマルチリンクで「楽しい」ハンドリングを追求。

レトロながら現代的 「隠れ」リアドアハンドルも

フランスの自動車メーカーであるルノーは、2024年に新型EV「5 Eテック・エレクトリック」を投入する予定だが、正式発表に先立ちデザインが明らかになった。

1972年に登場した小型車「5(サンク)」から車名を引き継ぐモデルで、来年2月26日にジュネーブ国際モーターショーで市販仕様が初公開される予定だ。しかし、世界知的所有権機関(WIPO)に提出された特許申請用画像から、レトロな外観が一足早く確認された。

ルノー5 Eテック・エレクトリックのデザイン特許画像
ルノー5 Eテック・エレクトリックのデザイン特許画像    WIPO

全体的なフォルムやヘッドライトの形状などは、これまでのプロトタイプと大きな違いはない。市販車の予告画像でも見られたように、ボンネット上にはバッテリー残量を表示する充電インジケーターが装備されている。

縦置きのテールライトなど、オリジナルの5のような直線基調のデザインが特徴的だ。フロントバンパー下部の左右の正方形はLEDデイタイムランニングライトと思われる。

4ドアのBセグメント・ハッチバックだが、リアのドアハンドルを隠すようなデザイン処理によって2ドアのように見せている。画像を見る限りでは、スズキスイフト(第4世代)と同様、リアはフラップ式のドアハンドルとなっているようだ。

ルノー・グループのルカ・デ・メオCEOは、フィアット在籍時に500を復活させたことで知られている。レトロなデザインをあえて採用することについては一家言あるようで、以前にも次のように語っていた。

「わたしは経験から、カルト商品を再発明することがブランド全体の着火剤になると理解しています。このクルマ(5)は、多くの人が買える価格のカルト的なクルマです。これはルノーブランド全体にとって始まりに過ぎません」

リアマルチリンクで「楽しい運転」を追求

ルノーの発表によれば、5 Eテック・エレクトリックは52kWhバッテリーを搭載する予定で、1回の充電での航続距離は400km(WLTPサイクル)になるという。また、運転の楽しさに焦点を当てているとされる。

Amprスモール・プラットフォーム(旧名称:CMF-B-EV)をベースに、ハンドリングを向上させるべくマルチリンク機構のリアアクスルを採用した。ルノーはBセグメントEVで唯一の採用事例だとしている。

ルノー5 Eテック・エレクトリックのデザイン特許画像
ルノー5 Eテック・エレクトリックのデザイン特許画像    WIPO

マルチリンク式は通常、トーションビームよりも乗り心地とハンドリングのバランスが良いとされる。これは、両特性を個別に細かく制御できるためで、比較的シンプルな非独立サスペンション特有の妥協を最小限に抑えることができる。

5 Eテック・エレクトリックのダイナミクスについて、車両性能担当副社長のジャン=セバスチャン・ブラジ氏は次のように述べている。

「R5(略称)は、メガーヌEテックとダイナミクスの点でまったく遜色のないものになるでしょう。このリアアクスルのおかげで、マルチリンクを採用し、多くのアンダーステア特性を持たせることができました。これにより、クルマの安定性が大きく向上しました。安全性が重要なのは明らかですから」

「このリアアクスルがあれば、安全性を犠牲にすることなく、非常にダイナミックなステアリングを握ることができます。つまり、リアアクスルが非常に優れたアジリティとステアリング・レスポンスを与え、回避運動のような極端な操作でもクルマの安定性を確保する秘訣となっているのです」

軽量化にも注力している。例えばバッテリーは、セルを4つの正方形の「ビッグモジュール」に分割した新しいレイアウトを採用している。これによってエネルギー密度が向上し、従来の52kWhバッテリーと比較して15kgの軽量化が可能になったという。

また、磁石を使わない新開発の電気モーターが搭載され、充電器、コンバーター、補助電源管理ボックスと統合されるため、従来型EVと比べてさらに20kg軽量化される。このモーターは最高出力136psを発生するというが、5 Eテック・エレクトリックでの性能は明らかにされていない。

価格は未定だが、ルノーはできる限りの低価格化を目指している。キャプチャー、クリオ、日産ジュークなどの内燃エンジン車のCMF-Bプラットフォームから、70%のコンポーネントを活用することが鍵になるようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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