W12気筒の終焉 ベントレー・フライングスパー・スピード 追い求める数値より大切なもの

公開 : 2023.12.12 17:45

細かなディテールが生み出すスピード感

現在フライングスパーには6種類ものグレードが存在している。クラフトマンシップが光るインテリアを備えたマリナーを最高峰としつつ、スピードとその限定車のエディション12。パワーユニットをV8とV6ハイブリッドから選べるS、ベントレーらしいウェルビーイングに特化したアズール、そしてすべての起点となるフライングスパーである。

その中にあって「スピード」の特徴は見た目の部分にあると言っていい。専用デザインの22インチホイールやフロントタイヤのすぐ後ろ、フェンダー上に掲げられたSpeedのエンブレム、全体的にダークなフィニッシュもスポーティな印象に拍車をかけている。

ベントレー・フライングスパー・スピード
ベントレー・フライングスパー・スピード

細かなディテールの積み重ねだが、そこに凝るのが伝統的な英国車好きの流儀である。例えばスポーティなジャケットを誂える際、乗馬に最適なのはセンターベントだが、ドライビングではサイドベントの方がベター。さらに肩にボックスプリーツを入れてもらえば完璧、といった一目にはわかりにくい小さな違い。小さいけれど、でも核心を突いた仕上げが「スピード」には込められているのだ。

パワートレーンだけでなく、熟成されたエアサス/4WS/電制油圧のスタビといった先端技術が演出するシャシー性能に関してもフライングスパー・スピードは究極といえる。

4ドアの内燃機モデルによって到達できる究極の高みと言ってもいいかもしれない。電動化時代が来る前に味わっておくべきモデルがあるとすれば、マニュアルシフトのスポーツカーか、フライングスパー・スピードのような振り切ったモデルなのだと思う。

試乗車のスペック

価格:3286万8000円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:5325×1990×1490mm
最高速度:333km/h
0-100km/h加速:3.8秒
燃料消費率:15L/100km
駆動方式:AWD
車両重量:2437kg
パワートレイン:W12気筒5950cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:635ps/6000rpm
最大トルク:91.77kg-m/1500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック
タイヤサイズ:275/35ZR22(フロント)315/30ZR22(リア)

ベントレー・フライングスパー・スピード
ベントレー・フライングスパー・スピード

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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