早くも「欧州の上級ブランド」へ肉薄 路面を問わず快適 BYDシール AWDへ試乗 しかもお手頃

公開 : 2023.12.22 19:05

BYDの電動サルーン、シール 路面を問わず優れた乗り心地 同等装備のBMW i4より価格はお手頃 欧州の上級ブランドに遜色ないと英国編集部は評価

低くない訴求力を備えるBYDの3車種

BYDシールが優れた電動サルーンであることを、AUTOCAR英国編集部では概ね理解している。スペインのサーキットやドイツの一般道で、その能力は確かめてきた。

それでも、深いワダチやツギハギの多いアスファルトでの印象を抜きにして、クルマの真の動的能力を確かめたとはいえない。多くのシャシー技術者が認めるように、英国の一般道で機能するサスペンションは、どの国の道でも充分に機能するものといえる。

BYDシール AWD エクセレンス(英国仕様)
BYDシール AWD エクセレンス(英国仕様)

読者もご存知の通り、中国のBYDは世界最大のバッテリーメーカーの1社に数えられる。英国では、1000台以上の同社の電動バスが、市民を乗せて市街地を駆け巡っている。それでも、まだBYDの知名度が高いとはいえない。

だが、2023年に同社は3種類のバッテリーEVを英国で発売した。そのいずれもが、低くない訴求力を備えている。多くの人に知られるブランドへ成長するのは、時間の問題だろう。

このシールは、BMW i4テスラモデル3ヒョンデ・アイオニック6などと同じクラスへ属する。いずれのモデルも、高い完成度と洗練度を実現しており、最も重要な車種の1つになっている。英国の手強い一般道での評価も高い。

同等装備のBMW i4より大幅にお手頃

といいつつ、英国のBYDが試乗のスタート地点へ指定したのは、グレートブリテン島北部のコッカーマスにあるサーキット。平滑に舗装されたコースが整備され、望めばボーリングもできそうなほど。

それでも、一般道へ足を伸ばすことも許され、ロンドン近郊のようにかなり傷んだ区間も試すことができた。果たして、シールは見事に舗装の不整を処理してみせた。

BYDシール AWD エクセレンス(英国仕様)
BYDシール AWD エクセレンス(英国仕様)

さて、英国で販売されるシールのパワートレインには2種類がある。安価な方がシングルモーターで、グレードはデザイン。リアに312psの駆動用モーターが搭載され、容量82.5kWhの駆動用バッテリーと組み合わされる。

高価な方がツインモーターのエクセレンス。システム総合530psの最高出力を誇り、駆動用バッテリーの容量は同じ。車重はデザイン・グレードより130kg重くなる。

構成としてはBMW i4に似ているものの、価格設定は大幅にお手頃。ほぼフル装備のデザインで4万5695ポンド(約845万円)から、エクセレンスで4万8695ポンド(約901万円)からに設定されている。シングルモーターとツインモーターの価格差は小さい。

同等装備のBMWは、シングルモーターで5万ポンド(約925万円)台。ツインモーターでは、6万ポンド(約1110)台へ上昇する。

しかも、前述の通りシールは英国の傷んだ一般道へ見事に対応する。乗り心地は全般的に穏やか。ヒョンデ・アイオニック6などで感取される、平均的な速度域での細かな上下動も、僅かに現れるものの充分抑制されていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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