「ルーフの上」で一晩 ポルシェ911 ダカールで真冬のキャンプ(2) オンロードも望外に面白い

公開 : 2023.12.23 09:46

お正月休みはキャンプという人も多いハズ 道具感の漂う見た目に最低地上高は161mm 英国編集部が、オプションのルーフテントでスコットランドに1泊

911 ダカールの上で眠りに落ちる

筆者は平坦な場所を探し、キャンプサイトにした。クランプを開き、リッドを持ち上げ、フロアを拡張。ポルシェ911 ダカールのルーフテントを張る。

伸縮式のハシゴを引き下ろし、4本の支柱で入口と窓側を持ち上げれば、設営完了。慣れれば2分で終わるだろう。

ポルシェ911 ダカールと筆者、リチャード・ウェバー
ポルシェ911 ダカールと筆者、リチャード・ウェバー

これはアイキャンパー社がポルシェへ提供しているアイテムで、英国価格は4635ポンド(約86万円)。同じく専用のアルミ製クロスバーの上へ固定されている。合計の重さは66kgもあるが、190kgの重さまで耐えられるという。

すべてをケースに格納すれば、130km/h以下の速度で走れる。設営したテント自体は、37km/hの風まで耐えられるらしい。

今夜はほとんど無風。夜空に浮かぶ雲の合間から、息を呑むような天の川が見える。これまで眺めた星空の中で、最も壮大だ。

ガスボンベをストーブへ固定し、クリスマスディナーのスタート。レトルトのボロネーゼ・パスタをいただく。体も温まる。唯一の野菜、芽キャベツも加熱。スーパーで調達したクリスマスチキンは、なかなかのお味だ。

クリスマスプディング・ケーキを温め、ブランデーと一緒に味わう。少し早いパーティーは、あっという間に終了。カメラマンとともに、ルーフテントへ戻る。

フロアの広さは一般的なダブルベッドとほぼ同じで、薄いフォーム・マットレスが敷かれている。筆者とカメラマンは、別々の寝袋で身を包み、911 ダカールの上で横になる。ブランデーのおかげか、すぐに眠りへ落ちたようだ。

真冬のキャンプが人気な理由を理解

翌朝、山の気温は2度まで落ちていた。顔が少しヒリヒリするほど寒い。不慣れな場所でも、想像以上に疲れが取れていることに驚く。

純正のルーフテントを買える予算があれば、立派なホテルで数週間は過ごせるだろう。とはいえ、真冬のキャンプが人気な理由も理解することができた。夜明けが近づくと空はピンク色に染まり、森では鳥がさえずり始める。遠くでは、オス鹿が鳴いている。

ポルシェ911 ダカール(英国仕様)
ポルシェ911 ダカール(英国仕様)

制汗剤シートで体を拭き、荷物をまとめ、テントを畳む。911 ダカールが下山すると、登る前と変わらない景色が戻る。ひと晩、他の動物が近寄ってこなかったことが、不思議に思えた。

舗装されたワインディングへ戻り、ケアンゴームズ山のスキー場を目指す。家族連れで混雑した駐車場へクルマを停め、グレートブリテン島で唯一、放し飼いにされているトナカイを眺めに行く。クリスマスだから。

この群れは、1952年にスウェーデンの原住民、サーミの人達によって贈られたもの。約800年前に絶滅してしまったが、現在は150頭にまで増えている。毛皮は分厚く、氷点下70度でも生き続けられるそうだ。

1頭のトナカイが、餌を持つ筆者へ近づいてくる。穏やかで、人間を恐れる様子はない。巨大な角を伸ばしたオスも近づいてくる。飼料をモグモグと、口のなかで何度も噛んでいる。動物好きなら、1日中眺めていられるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ウェバー

    Richard Webber

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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