ロータリーエンジンの栄枯盛衰 名車・珍車36選 前編 メーカー各社の挑戦

公開 : 2023.12.17 18:05

シトロエンM35

アミから派生したM35は、ユーリエ(Heuliez)製のドラマチックなファストバックボディに、シトロエンとNSUの合弁会社コモトール製のシングルローターエンジンを搭載した。一般に販売されることはなかったが、1969年から1971年にかけてテストとして数百台がシトロエンの既存顧客に配られた。

ボディにはステッカーが貼られるなどしてテスト中であることがアピールされた。テスト終了後、M35はシトロエンに返却されたが、一部は野に放たれ、個人の手に渡っている。

シトロエンM35
シトロエンM35

メルセデス・ベンツC 111

1969年に登場した実験的スポーツカーC 111シリーズは、当初は最高出力280psの3ローター、後に350psの4ローターと、主にロータリーエンジンを搭載している。やがて従来のピストンエンジンに切り替えたが、それは信頼性と耐久性に問題があったためだという。

しかし、現在は引退しているが、30年以上ダイムラーのエンジニアを務めたウォルフガング・カルベン氏は、セダンに搭載するつもりでロータリー開発を1975年まで続けていたと書いている。結局は実現せず、C 111がメルセデス・ベンツで唯一、公の場に姿を現したロータリーエンジン車である。

メルセデス・ベンツC 111
メルセデス・ベンツC 111

マツダ・カペラ・ロータリークーペ/RX-2

マツダが日本国外で販売するロータリーエンジン車向けの「RX」というネーミングは、1970年に始まった。RX-2はカペラ・ロータリークーペの輸出名で、ファミリアとルーチェの間に立つミドルサイズモデルであった。

マツダはこの時点で、ロータリーエンジンに最も熱心なメーカーとしての地位を確立していた。その生産台数はカペラ発売時で10万台に達する。対照的に、ロータリーのパイオニアであるNSUは、1964年から1978年までの間に4万台未満しか生産していない。

マツダ・カペラ・ロータリークーペ/RX-2
マツダ・カペラ・ロータリークーペ/RX-2

マツダRX-500

RX-500は、日産126x、トヨタEX-7と並んで、1970年に発表された3台のコンセプトカーのうちの1台である。そのファッショナブルなウェッジシェイプ、バタフライドア、ガルウィング式エンジンカバーが目を引くが、主に「安全性」に新しい観点をもたらそうとしていた。(日産も同じだが)加速しているのか、減速しているのか、一定速度を維持しているのかを後続車に示すテールライトを備えているのだ。

日産は3.0L V6を、トヨタは5.0L V8を搭載するが、マツダは当然ながらロータリーを選択した。RX-500のフロントアクスル前方に搭載されたツインローターユニットの最高出力は約250psと見積もられている。世界に1台しかない実車は大切に保管され、熱心なレストアを経て走行可能な状態にある。

マツダRX-500
マツダRX-500

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事