再エネに不可欠? V2G技術、北欧で実地試験始まる クルマの有効活用
公開 : 2023.12.18 18:05
・ポールスターがスウェーデンと米国でV2G技術を開発中。
・電力バランスの安定化につながる。金銭的なメリットも?
・フォルクスワーゲンも開発へ。EVのバッテリーを有効活用。
EVのバッテリーを有効活用
スウェーデンの自動車メーカーであるポールスターは、本拠地イェーテボリで、新型電動SUV「ポールスター3」を使った大規模なV2G(ビークル・ツー・グリッド)プロジェクトを進めている。
また、米カリフォルニア州でも現地パートナーと協力し、同州でのV2Gシステムの開発に取り組んでいる。まもなく実地試験を開始する計画だ。
V2Gとは、EV(電気自動車)に蓄えた電力を送電網から電力会社に売る技術のこと。電力需要のピーク時などに利用することで、需要と供給のバランス取りのほか、EV所有者に金銭的なメリットがあるとされる。
V2Gに必要な機能が双方向充電であり、EVは送電網から電力を受け取るだけでなく、反対に送電網へ供給できるようにしなければならない。V2Gが普及すれば、何千台ものEVの膨大な蓄電容量を活かし、オフピーク時に蓄電した電力をピーク時に送り返すことで、エネルギーバランスの安定化に役立つと期待されている。
自宅に太陽光発電システムを導入しているEV所有者は、ピーク時に太陽光エネルギーをEVのバッテリーに蓄えることで、ランニングコストの削減を見込める。
双方向充電を利用すれば、日没後にバッテリーの電力を使って家庭の電化製品を動かすこともできる。これはV2H(ビークル・ツー・ホーム)と呼ばれる。また、電気料金の安いオフピークの時間帯に充電しておき、料金が高くなるピーク時に家庭で使用すれば節約につながる。
冒頭で紹介したポールスターは、スマート充電器を介して車両と送電網を接続するVPP(仮想発電所)を開発している。VPPは、接続されたすべての車両の総蓄電容量を把握し、需要とバッテリーの最適化に基づいて充放電を行う。最終的にはEV所有者がバッテリーの充電状態を管理し、車両から輸出するエネルギーに対して税金を支払うことになる。
これまで双方向充電が可能だったのは、チャデモ(CHAdeMO)システムを使用するEVだけだった。そのため、英国で2021年3月から1年間実施されたV2Gの実地試験では、30kWhのバッテリーを搭載した日産リーフの所有者100名が対象だった。
V2Gは、現在ほぼすべてのEVが使用しているCCS充電システムの当初の規格には含まれていなかった。この問題を解決するため、「ISO 15118」と呼ばれる規格が開発中であり、2025年には正式承認される予定だ。理論上は、それ以降すべてのCCS搭載EVがV2Gに対応できるようになる。
ポールスターが兄弟ブランドのボルボと共同で開発しているのは、まさにこの規格である。ポールスターの実地試験は、イェーテボリで2024年前半から2年間、カリフォルニアでは2023年12月から2024年10月まで実施される。
フォルクスワーゲンも同様の道をたどり、EVと充電器間の自動通信を可能にする規格を開発している。
V2Gは、気象条件によって発電量が変動する再生可能エネルギーへの移行期において、重要な役割を果たすと期待される。
ポールスターとフォルクスワーゲンはいずれも、ほとんどの自動車は1日の大半を駐車場で過ごしており、それをエネルギー貯蔵に利用するのは理にかなっていると言う。