超「個性派」な英国車たち アストン・ラゴンダ ブリストル412 ロールス・カマルグ(1) 偏見は持たないで

公開 : 2023.12.31 17:45

風格が漂うサイドビュー 後ろ姿にも威厳

1977年には、ステアリングラックがラック&ピニオン式へアップデート。1978年にはリア・サスペンションが改良されるなど、機械的な更新が頻繁に施され、1986年までに合計529台がラインオフ。1985年には、ベントレー仕様も提供されている。

モデル末期には、北米仕様としてカマルグ・リミテッドという限定モデルを発表。だが、上品さに欠けるという評判を集め、その後のイメージにも強く影響を及ぼした。

ロールス・ロイス・カマルグ(1975~1986年/英国仕様)
ロールス・ロイス・カマルグ(1975~1986年/英国仕様)

今回ご登場願った、1982年式カマルグのオーナーは、マーク・グリフィス氏。ダークブルーのボディを鑑賞していると、やはり不当に低く評価されてきたように思える。氷河が徐々に溶けていくように、魅力が表面化してきたのではないだろうか。

確かに、流麗なスタイリングではない。フロントグリルは垂直にそびえ、ボンネットは広大。フロントガラスは、ロールス・ロイスらしく起き気味。リアタイヤが奥まり、リアのオーバーハングは実際以上に長く見える。

それでもサイドビューには風格が漂う。スクエアな後ろ姿も、威厳を感じさせる。寝かされたリアピラーや、リアデッキの処理などは1960年代のピニンファリーナらしい。滑らかな6.75L V8エンジンの豊かなパワーが、控えめに表現されているようだ。

小さなテールランプのデザインには無駄がなく、薄くワイドなフロント・ウインカーはボディサイドへ回り込む。ダークブルーの塗装は、見入ってしまうほど深遠。醜いクーペだと決めつけることは、事実に反するだろう。

印象的なまでに尖っていたラゴンダ

対して、ロンドンから北西へ登った、ニューポート・パグネルで生み出された4ドアサルーンは、印象的なまでに尖っていた。デビッド・ウィロビー氏が所有する1989年式アストン マーティン・ラゴンダは、生産終了直前にラインオフしたシリーズ4だ。

カーデザイナーのウィリアム・タウンズ氏が描き出したボディは、ドラマチックに角ばっている。これまで量産されたクルマの中でも、特に記憶に残る見た目ではないだろうか。フラットな面がシャープに折れ、日本の折り紙細工のようでもある。

アストン マーティン・ラゴンダ(シリーズ4/1987~1990年/英国仕様)
アストン マーティン・ラゴンダ(シリーズ4/1987~1990年/英国仕様)

当時のアストン マーティンがターゲットにしたのは、中東地域の富裕層。DBSをロングホイールベース化し、4ドアサルーンへ仕立てた1974年のラゴンダ・シリーズ1をベースとする。だがシリーズ2以降は、同社の新体制を表すように大幅に印象を改めた。

LEDを多用したメーターパネルや、タッチセンサー式のスイッチ類、オートロック機能など、先進的な電子装備を採用していたが、まだ課題も多かった。ラゴンダ・シリーズ2の発表は1976年ながら、本格的な量産が1978年に遅れる要因となった。

1984年には、デジタル・メーターなどへ改良を受け、音声合成で話すコンピューターを搭載。1985年にはシリーズ3へアップグレードされ、5.3L V8エンジンはウェーバー・キャブレターからマレリ社製の燃料噴射へ改良された。

この続きは、アストン マーティン・ラゴンダ ブリストル412 ロールス・ロイス・カマルグ(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・チャールズワース

    Simon Charlesworth

    英国編集部
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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