中国ニオ(NIO) 手頃な価格の新ブランド設立へ 右ハンドルEVも登場

公開 : 2023.12.20 11:05

・ニオは欧州に特化した手頃な価格のEVブランドを間もなく立ち上げる。
・さらに高級車専門のハイブランドを設立し、3ブランド体制へ移行。
・英国、UAEへの参入計画も。右ハンドル開発中。

3ブランド体制へ移行

中国の自動車メーカーであるニオ(NIO)は12月15日、2つの新しいEVブランドを設立すると発表した。欧州などグローバル市場へのテコ入れを図る。

そのうちの1つ、コードネーム「アルプス」と呼ばれるファミリー層向けブランドでは、市販予定車のプロトタイプを製作中とされる。同ブランドについて、ニオのウィリアム・リーCEOは次のように述べている。

ニオET5
ニオET5    ニオ

「アルプスのVB(テスト用プロトタイプ)が完成してから1カ月以上が経過しました。ファミリー層に焦点を当てているため、製品の定義が明確です。対照的に、ハイエンドブランドはエモーショナルな要素を提供する必要があります」

「来年からは第2のブランドを導入するため、これまでとは違ったニオをお見せできるでしょう。ファミリー市場はハイエンド市場とは異なります。わたし達は後発の利点を活かしています。これまではVBが完成すれば、すぐにSOP(生産開始)に入っていました。しかし、今回は少し待ってから参入し、ゲームを混乱させるつもりです」

リーCEOは、アルプスは初期段階で3つのモデルを発売し、販売活動はインターネットベースの直販チャネルで行う予定であることを明かした。

アルプスとニオの境界線については、「ニオのモデルがET5より下の価格になることはありません」と説明している。ET5は欧州でも販売されている電動セダンで、価格は4万7500ユーロ(約750万円)から。アルプスのモデルはこれより安く設定される可能性が高い。

第3のブランドは、「ファイアフライ」というコードネームで呼ばれている。欧州市場向けに設計された手頃な価格のEVをラインナップし、ニオやアルプスよりも低価格帯で競争する計画だ。フォルクスワーゲンルノーフォードなどがライバルとなるだろう。

英国、UAEへの参入計画も

また、右ハンドルの英国市場での計画について、リーCEOは「右ハンドルのプロトタイプは存在しますが、まずは(他の)欧州市場を理解し、定着させることに注力します」と述べた。

ニオはUAE(アラブ首長国連邦)もターゲットとしている。

ニオES6
ニオES6    AUTOCAR

「数か月前、アブダビとドバイをET7で往復するテストを行いましたが、何の問題もありませんでした。バッテリー交換ステーションを設置することで、エネルギー補給の問題を簡単に解決することができます」

一方、米国市場への参入はまだ計画段階にある。

設立から9年と歴史の浅いニオだが、アウディBMWメルセデス・ベンツポルシェのような欧州の高級車ブランドに対抗し、地位を確立すべく「ハイエンドモデル」の開発に取り組んでいるという。

「エグゼクティブ市場を制覇しなければ、利益もブランド認知度も限定的なものになります。市場規模は大きくなく、年間10万台程度と認識しています。しかし、メルセデス・ベンツSクラスを1台販売することで得られる利益は、Aクラスを数十台販売することに匹敵します」

「マス市場は第2のブランドが担当します。ニオブランドは、技術のブレークスルーとイノベーションを追求します。ハイエンドブランドを作るには、技術的な先進性が不可欠です。フラッグシップモデルの定義はさまざまですが、基本的には技術的なフラッグシップであることが重要です」

ニオは、そのフラッグシップモデルと思われる4つの名称(ET9、ES9、EE9、EF9)をすでに商標登録している。

リーCEOはまた、ミニバンの開発に着手したことも明らかにしたが、発売までには「しばらく時間がかかる」とした。

ニオの特徴の1つに、バッテリー交換システムが挙げられる。ニオはブランドごとに異なるバッテリーを開発しているが、いずれも同システムに対応させる。また、同社のバッテリー交換技術をあるパートナー企業にライセンス供与したというが、詳細は明らかにしていない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事