ケータハム 7台を乗り比べ(1) チャップマンの思想を体現したセブン 最大の強みは「軽さ」
公開 : 2024.01.06 17:45
「ケータハム・セブンはレースには速すぎる」
ジェームス・ホワイティング氏の愛車、1977年式ケータハム・セブン・ツインカムは、そんな面倒が起こる前のモデル。彼は、半世紀ほど前からセブンの整備やチューニングを専門とするガレージを営んでおり、モータースポーツへの造詣も深い。
ケーターハム・カーズを創業したグラハム・ニアーン氏に技術が認められ、公認の整備代理店としても指定されている。そんな事もあって、状態はすこぶる良い。
その名の通り、セブン・ツインカムは1650ccの直列4気筒ロータス・ツインカム・ユニットを搭載し、最高出力は162ps。当時は、フォードのクロスフロー・ユニットを搭載したセブン GTより、上位に属するモデルだった。
1978年から、ジェームスはケータハムとスポンサー契約を結び、スプリントレースやドラッグレースへ参戦。ブライトン・スピードトライアルなどのイベントで、セブンの実力を証明してきた。近年も750モータークラブ主催のレースで、勇姿を披露している。
ただし、ロイアル・オートモービル・クラブ(RAC)はセブンを市販車扱いせず、当初はプロダクションカー選手権への参加が許されなかった。ニアーンは、「ケータハム・セブンはレースには速すぎる」とプリントされたTシャツを着て、抗議したとか。
後に参戦が認められるものの、その締め出しをきっかけにセブンによるワンメイクレース・シリーズがスタート。現在も、多くのオーナーが腕を競っている。
ステアリングと乗り心地に感服
ジェームスのセブン・ツインカムは、1970年代の雰囲気を残し、今回の7台でも特に存在感が強い。ホワイトの塗装に映えるマルティニ・カラーは、1981年から変わらないという。
14インチの205/50タイヤは、サイドウォールが厚い。コンポモーティブ社製のアルミホイールが、クラシカルな印象を強めている。
トランスミッション・トンネルなど、質素なコクピット内はアルミパネルがむき出し。ダッシュボード上には、2枚の小さなスクリーンが備わるだけ。着座位置も明確に低い。ドライバー正面のメーターは、油圧と油温の2枚。速度計はない。
オーナーいわく、このセブン・ツインカムがサーキットを走るのは約30年ぶりだとか。丁寧に扱おう。
エンジンを始動させると、ビスター・ヘリテージのパドックで談笑するメンバーが振り返る。サイレンサーは非常に小さく、エグゾーストノートが周囲へこだまする。
3000rpm以下では、さほど力強いわけではない。カムのプロファイルやツイン・ウェーバーキャブレターの実力を発揮させるには、もっと回す必要がある。
今回の中では1番古くても、ステアリングと乗り心地は感服するほどスイート。さほど飛ばさなくても、完璧なバランスがすぐに表出する。残りのセブンにも共通する特徴が、しっかり備わることがわかる。
この続きは、ケータハム 7台を乗り比べ(2)にて。