「本物の個性」を継承 アストン マーティンDB12へ試乗(2) ブランドにおける最高傑作の1台

公開 : 2024.01.01 19:06

AMG由来のV8と後輪駆動を継承するDB12 ベントレーに並ぶ高級感の車内 タッチモニターを獲得 スポーティ度を高めつつ快適性は維持 英国編集部が評価

ソウルフルで芳醇なV8エンジン

アストン マーティンDB12は、最高出力680psを発揮することに加えて、ファイナル・レシオがショート化され、DB11より遥かに加速が鋭い。ダイレクトで熱狂的に吹け上がるフェラーリのV8ユニットより、ソウルフルで芳醇な印象もある。

アストン マーティンの技術者は、過度にシリアスにすることなく、従来以上のパワーとスピード、エネルギッシュさを与えることに成功した。濡れて滑りやすい状況でも、路面を処理する落ち着きは第一級でありながら、目覚ましく速い。

アストン マーティンDB12(英国仕様)
アストン マーティンDB12(英国仕様)

トランスミッションは、GTモードを選ぶとスムーズさが増す。スポーツやスポーツ+モードでは、低いギアを保持するようになるが、アクティブ・リアデフが過度に働いたり、挙動が過敏になることはない。

アクセルペダルを深く倒すと、カタパルト発進のように身体は後方へ押し付けられる。どんな状況においても、DB11より迅速。どのくらいの差があるのか、実際に比べたくなるほど。

試乗の際に、アストン マーティン会長のローレンス・ストロール氏と会話する時間を得られたが、彼はDB11をあえて「遅い」と表現していた。技術者たちも、同じ意見を耳にしていたことだろう。確かに、DB12は、DB11よりDBSへ近いように思う。

ブレーキは、スチール製ディスクが標準。カーボンセラミックはオプションで、試乗車には装備されていた。ペダルをしっかり踏み込む必要はあるが、最終的に得られる制動力はかなり頼もしい。

次のコーナーを追い求めたくなる気持ち良さ

8速ATは、スーパーツアラーというよりグランドツアラー側。デュアルクラッチATのような、キレキレの変速は叶えていない。それでも、4.0L V8ツインターボ・エンジンと調和できている。

本域でのサウンドは素晴らしい。オールドスクールな自然吸気V12ユニットほどの壮大さはないものの、野蛮さと平穏さの二面性を楽しめる。

アストン マーティンDB12(英国仕様)
アストン マーティンDB12(英国仕様)

乗り心地は、低速域では少々硬め。意図された目的を実感する。連綿と作られてきたDBシリーズより、グランドツーリング・スポーツカーへ歩み寄った事実を表している。同時に、高速域での姿勢制御は感心するほど洗練されている。路面の良し悪しを問わず。

ステアリングホイールには充分な感触が伝わり、レシオは適度にクイック。自然と安心感を抱け、タイトでバランスに優れた、直感的な操縦性を堪能したいと思わせる。

トラクションとスタビリティの制御システムも絶妙。後輪駆動らしいドライビング体験を生み、意欲的でスポーティな走りを許容する。それでいて、325km/hと680psの能力を持つDB12を、ドライバーの味方へ留めてくれる。

2023年7月のフランスでは、南部のナポレオン街道とコル・ド・ヴァンスをドライブしたが、2速や3速で巡るコーナーが多く存在した。そこでDB12は、秀抜な姿勢制御とグリップ力、滑らかで安定した操縦性を披露した。

DB11よりやや硬めの乗り心地とはいえ、高速コーナーでのフィードバックやマナーが向上していることは明確。次のコーナーを追い求めたくなる、気持ち良さがあった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

アストン マーティンDB12へ試乗の前後関係

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