「本物の個性」を継承 アストン マーティンDB12へ試乗(2) ブランドにおける最高傑作の1台
公開 : 2024.01.01 19:06
パワフルなクーペだと忘れるほど快適
他方、低速コーナーでは欲求不満が生じるかもしれない。その要因の1つが、大きくなったボディ。またシャシーとアクティブ・リアデフは、高速走行時の一体感重視でチューニングされている様子。ヘアピンでテールを流すことは、お好みではないようだ。
敏捷性という点では、ひと回り小さいアストン マーティン・ヴァンテージにアドバンテージがある。DB12が、スポーティ度を増したとしても。
特筆すべきストロングポイントは、快適性。アダプティブタンパーの能力は、間違いなく拡大されている。低速域での上質感は唸るほどで、パワフルなクーペを運転していることを忘れるほど。路面の凹凸へ身構える必要はない。
高速道路でも、リラックスして長時間過ごせる。とはいえ、21インチ・ホイールを包むミシュラン・パイロットスポーツ5 Sタイヤからのロードノイズは大きめ。外界との隔離性では、クラストップの水準には届いていない。
全方向で実力を高めたDB12のお値段だが、英国では18万5055ポンド(約3424万円)からに設定された。DB11のV8エンジン版は、モデル末期に約16万5000ポンドで売られていたが、新車価格の上昇や進化内容を踏まえれば、妥当といえるだろう。
コンバーチブルのDB12 ヴォランテは、約1万5000ポンド(約278万円)の追加予算で選べる。こちらも、納得できる設定にある。裕福なターゲット層においても、費用対効果は重要な尺度なはず。
燃費は、高速道路のクルージングで9.5km/L前後。1度の満タンで走れる距離は、約740kmになる。
ブランドにおける最高傑作の1つが誕生
アストン マーティンの技術者は、巧みなアップデートを施し、重要な量産グランドツアラーのポジショニングを巧みに整えた。先代よりハンサムで速く、操縦性に優れ、デジタル環境も充実している。インテリアの水準も、目に見えて向上した。
ベントレー・コンチネンタルGTと、充分な距離感もある。静的にも動的にも魅力や上質感を高め、DB11以上の訴求力を持つラグジュアリー・クーペに仕上がっている。
ドライバーズカーとして、フェラーリ・ローマなどとの競争力を磨きながら、アストン マーティンらしい快適性は維持された。本物の個性が受け継がれている。DBシリーズの魂を霞ませることなく、このブランドにおける最高傑作の1台が誕生したといえる。
◯:大幅に向上したインテリアの品質 最新のデジタル環境 DB11より高水準な走りを叶えつつ、グランドツアラーらしい乗り心地と操縦性を維持
△:インフォテインメント・システムのソフトにはデバッグが必要 ライバルより大きく重く感じられるボディ
アストン マーティンDB12(英国仕様)のスペック
英国価格:18万5055ポンド(約3424万円)
全長:4725mm
全幅:1980mm
全高:1295mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:8.2km/L
CO2排出量:276g/km
乾燥重量:1685kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:680ps/6000rpm
最大トルク:81.4kg-m/2750-6000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)