高性能は「ひけらかさない」 ジャガーXFR 当時のクラス最強サルーン 英国版中古車ガイド
公開 : 2024.01.05 19:05
ジャガーらしさを堪能できるXFR 紳士のように能力をひけらかさない容姿 洗練されたクラス最強サルーン 英国編集部が魅力を振り返る
もくじ
ー英国紳士のように能力をひけらかさない
ー洗練されたクラス最強サルーン
ー新車時代のAUTOCARの評価は
ーオーナーの意見を聞いてみる
ー購入時に気をつけたいポイント
ー知っておくべきこと
ー英国ではいくら払うべき?
英国紳士のように能力をひけらかさない
ジャガーXFRは、エアアウトレットの切られたボンネットの内側に、特別なエンジンが載っていることを過度には主張しない。同時期のE60型BMW M5やマセラティ・クアトロポルテのように、あからさまな変更は加えられなかった。高速なジャガーとして。
ハンサムな姿はそのままに、専用のボンネットやホイールナットで、控えめに差別化。本物の英国紳士と同じく、能力をひけらかすことはない。後ろ姿は、4本出しのマフラーカッターで凄みを利かせていたが。
エンジンは510psを発揮する5.0L V8スーパーチャージャーで、発情期のオスライオンのように、勇ましい唸りを放つ。最高速度は249km/hへ自主規制されていたが、0-100km/h加速4.7秒という俊足から、それ以上の余裕があることは明らかだった。
最速のスポーツサルーンへ躍り出るべく、当時のジャガーの本気が落とし込まれていた。だが速さ以上に、最大の特長といえたのが洗練性。圧倒的なパフォーマンスを、平然と披露してみせた。
サスペンションには、アダプティブダンパーを採用。ニュルブルクリンクでは岩のように引き締めることもできたが、ロンドンの傷んだ一般道では、しなやかに衝撃を吸収できた。当時は、他に例のない二面性を備えていた。
洗練されたクラス最強サルーン
ステアリングレシオはショート化され、ブレーキはフロントに380mm、リアに376mmのディスクを採用。リミテッドスリップ・デフにピレリPゼロ・タイヤが組み合わされ、2009年のAUTOCARでは、ドライコンディションでM5を超える速さを見せつけた。
スプリングはノーマルのXFより30%硬く、車高はダウン。理想的な道へ出くわしたら、扱いやすい操縦性を探求することも可能。豪快なパワースライドも許容した。
スタイリングと同様に、インテリアも主張は控えめ。ノーマルのXFの車内へ、僅かにスパイスを効かせた程度といえた。専用ステッチのレザーシートと、305km/hまで振られたスピードメーターが目立った違い。「R」のロゴが、随所に施されてもいる。
脈打つように光るスタートボタンや、システムオンで立ち上がるダイヤル式のシフトセレクター、回転するエアコンの送風口などは維持。特別感の香るディティールを、堪能するのも悪くない。
インフォテインメント・システムは、当時でも時代遅れだった。燃費も悪い。とはいえ、5.0L V8スーパーチャージャー・エンジンを積むサルーンとして、求めるものは別にあるはず。
21世紀の英国が、洗練された世界最強クラスのサルーンを生み出すことを証明した、ジャガーXFR。中古車になっても、その輝きは薄れていないと思う。