「公道での許容値」を遥かに超える サーキットでの高評価の序章 BBDC 2023(3)
公開 : 2023.12.30 13:45
AUTOCARの年末恒例、ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権 2023年に試乗したクルマで、最高のドライビング体験を与える1台は? 11台を一挙比較
思い切り振り回せる以上の最高出力
トールマン・エディション205 GTiは、非常に良く練られたパッケージングにあり、番狂わせな好評価を集めても不思議ではない。価格は、ベース車両抜きで12万ポンド(約2172万円)もするのだが。
実は、筆者は最近まで1.9Lのプジョー205 GTiを所有していた。殆ど乗る機会がなく、やむなく売却したのだが、爽快な敏捷性やエネルギッシュさ、クルマと一体になったような感覚は今でも忘れられずにいる。
エディション205 GTiは車高が落とされ、足まわりは引き締められている。アクセルペダルの加減でスピンしかけるほどの、過剰な回頭性までは抑えられている。しかし、それは決して悪い事実ではない。オリジナルは、少し活発すぎたと思う。
エンジンはパワーアップされ、ポルシェ・ケイマンに並ぶパワーウエイトレシオを得ている。スロットル・マッピングはもう少し調整が必要かもしれないが、優れたシャシーを思い切り振り回せる以上の最高出力を放てる。
フロントのリミテッドスリップ・デフが、しっかり活きる。BBDC選手権の配点にも期待を持てる。
対して、プロドライブP25の印象は、エディション205 GTiと明らかに異なる。当初は、冷たくクルマへ迎えられたように感じた。オリジナルから大きく変化し、当時ではあり得なかった、シフトパドルでの変速も可能だ。
筆者の欲求ではなく、走りを評価するため、気持ちを高ぶらせて激しく駆り立てる。速くなるほど、進化した結果が現れる。シャシーは能力が拡幅され、ライン取りしやすい。
公道の許容値を遥かに超える能力
これが、P25の特徴だろう。アリエル・アトム 4Rに近いといえるが、可能な限り速く走ることへ最適化されている。限界領域は極めて高い。
ともにする時間が伸びるほど、1つの考えへ辿り着いた。2日目のサーキットでは、信じられないような走りを披露するかもしれないと。
レストモッドの2台の次に、改めてアウディRS7へ乗る。このクルマを選んだ理由は、大きな変化を求めたから。確かに、狙い通りだった。
すこぶる速く、カタパルト発進のように加速は猛烈。安心感は高いが、楽しさはほどほど。ボディは大きく重く、セラミックブレーキとオプションのコイルスプリング・サスペンションが組まれていても、一般道では肩身が狭い。
P25と同じく、サーキットなら、こんな印象を覆せるかもしれない。フロントノーズの動きが優先される、従来のRSシリーズとは異なる印象を残したからだ。
911 GT3 RSは、公道の許容値を遥かに超える能力で圧倒されるだろうと予想していた。ところが、遥かに優れた適応力を持ち、良い意味で裏切られた。
身体を包むように支えるシートは、快適といえる座り心地。ダンパーを緩めリアデフの効きを弱くすれば、他では得難い水準のドライビング体験を享受できる。
ダウンフォースを増したボディと、引き締まったサスペンションを持ちながら、通常の911 GT3のように路面を受け流す。公道向けのグッドイヤー・タイヤが組み合わされ、想像ほどシリアスではなかった。
サーキットでの高評価を期待させる、序章といえた。控えめに表現しても。