どちらが「ベターなM」か BMW M3 CS vs M2 クーペ 舞台は雨のサーキットへ BBDC 2023(4)

公開 : 2023.12.31 13:45

AUTOCARの年末恒例、ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権 2023年に試乗したクルマで、最高のドライビング体験を与える1台は? 11台を一挙比較

小川の流れるアングルシー・サーキット

審査2日目の午前9時。グレートブリテン島中西部に位置する、アングルシー・サーキットのピットレーンを照らすシグナルが、ブルーに変わる。予報通り、朝から雨。横なぐりの。コントロールタワーから見下ろすと、コースを横切るように小川が流れている。

このサーキットには、緩やかに右へ弧を描く高速コーナーの先に、ロケットと呼ばれるヘアピンカーブがある。ブレーキング直前、高性能なモデルでは220km/hを超える。

ブラックのアリエル・アトム 4Rと、オレンジのランボルギーニ・ウラカン・ステラート、ブルーグレーのポルシェ911 ダカール
ブラックのアリエル・アトム 4Rと、オレンジのランボルギーニウラカン・ステラート、ブルーグレーのポルシェ911 ダカール

こんなトリッキーなコンディションを可能な限り平穏にこなすなら、FFホットハッチホンダシビック・タイプRが良いかもしれない。あるいは、四輪駆動のスーパーサルーン、アウディRS7 スポーツバック・パフォーマンスも好適だろう。

そんなことを考える筆者を横目に、のっけからイリヤ・バプラートが自然吸気のV10エンジンを容赦なく回す。8500rpmのレブリミットへ当てながら、ピットレーンを出ていく様子に、筆者も気持ちが奮い立たされる。

彼はBBDC選手権の審査員として初めての参加だが、まったく萎縮する様子はない。610psを発揮するランボルギーニ・ウラカン・ステラートにも、臆さない。むしろ、一般道で感じ取った好印象を、更に探ろうとしている。

驚くほど、ドライバーの自信を喚起するスーパーカーだ。ランチタイムまでに、全員の審査員がウラカン・ステラートのステアリングホイールを握った。サンドイッチを口にしながら、5名の誰もが称賛の言葉を漏らす。

安心してシャシーの能力を引き出せる

「笑いが止まらないほど懐が深く自在」と、ジェームス・ディスデイルが口火を切る。悪路にも対応するブリヂストン・タイヤは、アンダーステアを見事に抑制。黒魔術で生成されたコンパウンドなのでは?と冗談を交える。

高速コーナーでも僅かなオーバーステアを許容する、シャシーの手懐けやすさにも触れる。ヘアピンから2速で立ち上がる、ケータハム・セブンのようだと話す。

英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権 2023 サーキット・ステージでの審査の様子
英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権 2023 サーキット・ステージでの審査の様子

ウラカン・ステラートは、サーキットを前提にしていない。だが、ランボルギーニが緻密にチューニングを加えた結果が見事に機能。むしろ、得意分野になっている。

ポルシェ911 ダカールとの違いも、明らかになった。2台とも近い時期に発売され、同じような仕立てにあり、比較されがちな関係にある。たとえポルシェでも、ウラカン・ステラート級の一体感や楽しさを獲得することは、簡単ではない。

911 ダカールの強みは、ドライビングポジションと直感的なステアリング。それは一般道だけでなく、サーキットでも活きる。動力性能では僅かに劣っても、より自然な操縦性でドリフトに興じれる。

「安心してシャシーの能力を引き出せます。四輪駆動システムは、想像以上の仕上がり。前進しながら、思い切りテールスライドで振り回せます」。とアンドリュー・フランケルが微笑む。

ウラカン・ステラートで深いドリフトアングルへ持ち込むと、ドライブトレインの挙動が乱れる場面があった。派手にドリフトを続けるべきか、進行方向へなだめて加速するべきか、判断を迷うように。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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