「心を動かす」レストモッド トールマン205 GTi vs プロドライブP25 雨との相性で苦戦のシビック・タイプR BBDC 2023(5)
公開 : 2024.01.01 13:45
極めて正確な運転スタイルが要求される
巨大なウイングで、自己主張するマシンも複数ノミネートしている。アルピーヌA110 Rと、アリエル・アトム 4R、ポルシェ911 GT3 RSという、精鋭3台だ。
いずれもダウンフォースを生成し、セミスリック級のスポーツタイヤを履いている。特に911 GT3 RSは、ル・マン・マシン並みにシリアスな内容にある。
このトリオで、ドライバーの気持ちを掴むのに苦労したのが、アルピーヌA110 R。シビック・タイプRの苦戦と同様に、惜しいことに雨のサーキットとの相性が芳しくなかった。
一般道を見事なまとまりで軽快に駆け抜けたが、冷えて濡れたアスファルトにはうまく対応できない。コーナーの入口では顕著なオーバーステアを示しつつ、出口が迫りパワーを加えていくとアンダーステアへ転じる。
この挙動が、A110 Rの足を引っ張る。9万4990ポンド(約1719万円)という英国価格を踏まえると、1.8L直列4気筒ターボ以上のパワートレインも欲しくなる。
プライヤーは、極めて正確な運転スタイルが要求されたと振り返る。指先で繊細に操るように。さらに、すべてを開放しても充足感はさほど高くない、とも感じたという。筆者も同調する意見だ。
対するアリエルとポルシェは、BBDCでしばしば優勝を掴んできた強豪。アトム 4Rと911 GT3 RSがトップ3へ選出されても、まったく不思議ではない。しかし、暖かく乾燥したコンディションとは真反対のサーキットで、能力を発揮できるだろうか。
信じられないほど運転へ惹き込まれた
911 GT3 RSは、審査員の期待へ応えた。ミーティングルームへ戻ってきた辛口のフランケルから、「この状況でも、2世代前の911 GT3 RSを無力に感じさせるほど」。という言葉を引き出したことが、明確な証拠といえる。
土砂降りのサーキットでは、本来のポテンシャルは発揮できない。だとしても、ポルシェのクーペへ相応しい精度は揺るがない。
表面温度が上がらないタイヤと歩調を合わせるべく、むやみにコーナーへは突っ込めない。しかし、様子を探りながらとはいえ、グリップ力は想像以上。フルスロットルへ耐える余裕があることには、驚かずにいられなかった。
「濡れたサーキットで、あのタイヤは充分に機能しませんが、コーナーの侵入を調整すれば大丈夫。信じられないほど運転へ惹き込まれました。より速く、より滑らかに扱えるドライバーになるよう、クルマから促されるように」
というディスデイルの発言へ、プライヤーも賛同する。「圧倒されるほどでもなく、親しみにくいわけでもない。落ち着いていれば、受け入れてくれます」
アトム 4Rも、スーパーカーへ迫る身体能力で深い爪痕を残した。ただし、バプラートは少々過激な特性へ馴染めなかったらしい。「オスのライオンを操っているよう。エキサイティングですが、飛び抜けて楽しいとも感じません」
車重は700kgと軽く、6速MTはシーケンシャル。ブースト圧の波を予想しきれないと、翻弄される可能性はある。ブレーキも、ロックしないよう力の調整が求められた。