「3車3様」の楽しませ方 優勝は? 911 GT3 RS vs アトム 4R vs ウラカン・ステラート BBDC 2023(7)

公開 : 2024.01.03 13:45

以心伝心の自然吸気V10エンジン

運転席へ座ると、横に長く切り取られた前方視界が広がる。1956mmという全幅の広さに、初めは圧倒される。人間工学的にも、優れるとはいいにくい。いずれも、ランボルギーニらしい。

ところが、ウラカン・ステラートの走りっぷりは、過去のどのランボルギーニとも異なる。通常のウラカンより25%ソフトに調整され、ストロークが伸ばされたサスペンションが、ふわりと荒れた路面を処理していく。

ランボルギーニ・ウラカン・ステラート(英国仕様)
ランボルギーニ・ウラカン・ステラート(英国仕様)

通常なら衝撃へ身構えるような隆起部分にも、怯える必要はない。ひび割れてできた穴も、深いワダチも、何事もなかったかのようにいなす。

柔軟な足腰によって、従来以上に確かな自信を抱いたまま、限界領域まで迫ることができる。クイックなステアリングと、見事に制動力が立ち上がるブレーキ、小さくないボディの動きが相乗し、荷重移動は明確。回頭性を高められる。

自然吸気の5.2L V型10気筒エンジンのレスポンスは、まさに以心伝心。爆発するように、甚大なサウンドとエネルギーが発散される。

これらが生み出すコーナリングは、信じられないほどの極上体験。アクロバティックと表現しても良いだろう。凄みを増したボディと、スーパーカーのパワートレインを備えながら、鋭敏なラリーマシンのように現実世界を我が物にできる。

サーキットでも遺憾なく能力を発揮

どちらかといえば、ウラカン・ステラートは公道との相性がいい。とはいえ、サーキットでも遺憾なく能力を発揮できる。意のままに振り回せるバランスと、自在のコーナリングスタンスは、トールマン・エディション205 GTiにも近いかもしれない。

コーナーのきつさを問わず、望み通りのドリフトアングルへ持ち込める。四輪駆動システムは瞬時にトルクを分配し、制御不能へ陥ることを防ぐ。高価なランボルギーニを、路肩へ突っ込ませる可能性は低い。

ランボルギーニ・ウラカン・ステラート(英国仕様)
ランボルギーニ・ウラカン・ステラート(英国仕様)

「最高!」。とアンドリュー・フランケルが笑う。「911 ダカールの扱いやすさと安定性に、一層のスピードとドラマが融合した感じ。ランボルギーニの運転がこれほど楽しいと感じたのは、いつぶりでしょう。間違いなく過去イチですね」

ベスト3へ勝ち残った、アトム 4Rと911 GT3 RS、ウラカン・ステラートの楽しませ方は3車3様。総合的な5名の判断で、どの1台が2023年のベストへ選ばれたのだろうか。最後のまとめは、今回はオブザーバーとなったマット・ソーンダースへお願いしよう。

この続きは、BBDC 2023(8)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権 2023の前後関係

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