1970年代の「特別」へ浸れる アストン マーティンV8 英国究極の1台 UK中古車ガイド

公開 : 2024.01.06 19:05

1970年代の英国を代表 アグレッシブで優雅なボディにV8エンジン 運転すれば1970年代の特別へ浸れる 英国編集部が魅力を振り返る

アグレッシブで優雅なボディにV8エンジン

AUTOCAR英国編集部の編集長が、半ズボンで原っぱを駆け回っていたであろう1968年。アストン マーティンはDB5の進化版、DB6の後継モデルとなる、DBSを発売した。

デザイナーのウィリアム・タウンズ氏が描き出した2+2のボディは、圧倒的にアグレッシブでありながら、惹き込まれるほど優雅。シャシーには、DB6 ヴァンテージ譲りの直列6気筒エンジンが搭載された。

アストン マーティンV8(1972〜1989年/英国仕様)
アストン マーティンV8(1972〜1989年/英国仕様)

1969年に、アップデート版となるDBS V8が登場。技術者のタデク・マレック氏が設計した、オールアルミ製でツインカムの5.3L V型8気筒エンジンがフロントに収まった。車重は軽くなかったが、印象的なほど速かった。

0-97km/h加速は6.0秒。最高速度は259km/hがうたわれた。トランスミッションは5速マニュアルのほかに、3速オートマティックも選択できた。

ところが製造コストがかさみ、アストン マーティンを所有するデイヴィッド・ブラウン(DB)社は経営難に。1972年に新たな事業投資グループへ買収され、モデル名からDBが削除。DBSのスタイリングへ手が加えられ、V8だけを名乗り再出発を果たした。

1977年には、高性能なV8 ヴァンテージが追加。大きなキャブレターを載せ、カムタイミングに変更を受け、最高出力は約4割も向上した。アストン マーティンは具体的な数字を公表していないが、390馬力以上は出ていたようだ。

V8 ヴァンテージでは、0-97km/h加速を5.3秒へ短縮。最高速度は273km/hに達した。当時最速の1台といえ、多くの改良を重ねながら1989年まで生産は続いた。

運転すれば1970年代の特別へ浸れる

V8 ヴァンテージとV8の見た目の違いは、フロントグリルと大きなエアインテーク、ダックテール状のリアスポイラーなど。サスペンションも引き締められ、ホイールとタイヤも専用品。ブレーキもアップグレードされている。

マッシブなスタイリングは多くのクルマ好きを魅了し、現在でも少なくない数が残存している。丁寧にメンテナンスされ、週末の特別な時間を楽しめる状態の良いV8も、英国では珍しくない。

アストン マーティンV8(1972〜1989年/英国仕様)
アストン マーティンV8(1972〜1989年/英国仕様)

アストン マーティンらしく、運転すれば1970年代の特別へ浸ることができるはず。V8エンジンはカムシャフトとタイミングチェーン、エグゾーストのノイズを重ねた、素晴らしい音響体験を与える。

5速MTのシフトレバーの動きは滑らかといえず、力が必要。3速ATの方が、乗りやすさでは上といえる。ボディサイズは小さくなく、初めて公道へ出る時は少し圧倒される感じも受けるだろう。

ステアリングにはパワーアシストが備わり、驚くほど正確でありながら、適度な重みがあり好感触。ロックトゥロックは2.9回転だ。

スタイリングに魅了されたからといって、気軽に手は出さない方が良いだろう。ステアリングやブレーキ、トランスミッションの操作は安楽ではない。維持費は小さくなく、小回りも効かない。

しかし、それらを受け入れられれば、ブリティッシュ・マッスルカー的な唯一の体験を堪能できる。1970年代の英国を代表する、究極の1台といえるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ピアソン

    Mark Pearson

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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