新型BMW M2クーペ 「乗り手を選ばず高性能」 トルコン8速AT仕様を侮るべからず

公開 : 2023.12.27 17:45

「クルマ好きを虜にするM最小のモデルBMW M2クーペ」MTもATも正規輸入ラインナップから選べる今、トルコンATを搭載する仕様に試乗しました。先代DCTから変更された新型M2の良さを語ります。

M最小、サイズ感に惹かれる

世代交代によるボディのサイズアップは自動車世界の常識としてある。

BMWを例にとれば、かつて一世を風靡したE30の3シリーズは、現在の1シリーズよりも逆にひとまわりほどコンパクトなくらいなのである。

BMW M2クーペ(8速AT)
BMW M2クーペ(8速AT)

BMW Mモデルの末っ子たるM2がファンから特別な眼差しでみられる最大の理由もそのサイズ感である。FFになってしまった1、2シリーズとは違ってFRで通すM2は、ツーリングカーレースを戦うために生み出された伝説的な初代M3(E30)を彷彿とさせるスポーツセダンの最新版なのである。

現行のM2は2代目となり、もちろんBMW M謹製のストレート6エンジンを搭載。またギアボックスも先代と同じくATとMTから選べる。ただATの構造は違っていて、先代が8速のDCTだったのに対し、今回のMステップトロニックは8速トルコンATになっている。

最高出力が410psだった先代のM2コンペティションには少し残念な記憶がある。膨らんだ前後フェンダーはやる気十分で、エンジンもすこぶるパワフル。公道レベルでは充分攻撃的なクルマに思えた。ところがミニサーキットで振り回してみると、なかなかキレイなオーバーステアに持ち込めなかった。

フロントより2サイズ太いリアタイヤが強めのアンダーを固持しているようにも感じられた。アンダー傾向に仕立てる安全策は 「思ったより数が出る」スポーツモデルの常套手段といえる。

では460psを発揮するS58ユニットをはじめとして、車体構造の多くをM3/M4から受け継いだという今回はどうか?

MTかATかで悩める贅沢

筆者は以前MTの個体を試乗しているので、今回の赤い試乗車が8段ATでちょうどよかった。MTかATかという贅沢な悩みはオーナー予備軍が気にしている部分だと思う。

MTはエンジンのおいしいパワーバンドを使い、クルマとより高い一体感が得られることは間違いない。シフトダウン時に重宝するオートブリッパー機能も、新型M2ではより精度の高いシステムとなっている。

BMW M2クーペ(8速AT)
BMW M2クーペ(8速AT)

だが進境著しいのはトルコンATの方かもしれない。ロックアップの制御が素早くて滑る感じがしないし、信頼性もパドルシフトによる変速スピードも格段に上がっている。また発進時のマナーなどはDCTを完全に凌ぐ。さらに新型M2の場合ATの方が燃費もいい。今回M2がDCTからトルコンATに戻ったことがその証明だろう。

いよいよMTの長所はノスタルジーだけ? そう言いたくなるほど、ATの新型M2の仕上がりはよかった。シフトダウンのみパドル行うスタイルで、MTモデルよりはるかに正確に走らせることができたのである。

新型M2にはMドリフトアナライザーなるアプリも装備されているので、MTよりもドラビングに集中しやすいATを選びつつ、電制LSDや10段階調整できるトラクションコントロールを使いこなして、ドリフトコースで思う存分振り回した方がより深く楽しめるに違いない。

新型M2のパフォーマンスの前では「ヒール&トゥが美しくキマる!」など些細な楽しみに過ぎないと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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