不自然に「宙に浮いたボディ」 ロータス・シックス(1) 傑作はオフロードも強かった
公開 : 2024.01.13 17:45
ロータス=ライトウエイトの方程式を生み出したシックス 山岳路を駆けるトライアルレースでも強さを証明 セブンの前身を英国編集部がご紹介
トライアルレースのためのシックス
伝説的なロータス・セブンの前身となったのが、ロータス・シックス。別名、ロータスMk VIだ。
クルマを愛する英国人が、自宅のガレージで組み立てることができる、軽量なスポーツカーだった。コーリン・チャップマン氏による知的な設計が与えられ、ロータスというブランド名を冠して売られていた。
スペースフレーム構造の軽いシャシーに、サイドバルブのフォード・エンジンが搭載され、多くの若手レーサーのキャリアアップへ貢献してきた。1957年に、セブンへ交代するまで。
今回ご紹介する「HEL 46」のナンバーで登録された、ペール・ブルーに塗られたシックスも、確かな歴史を築いてきた1台。サーキットでのレースや、ヒルクライムでのタイムアタック以外にも、活躍の場を広げていた事実を証明している。
見た目は、少し不格好かもしれない。正式にロータス・エンジニアリング社が設立される4年前、1948年に生産されたシックスだが、車高は不自然なほど高く、幅が細い。
険しい山岳道路を駆け巡った、トライアルレースのために仕立てられた貴重な1台だ。1953年から、シックスはレース用のキットカーとして正式に販売が始まるが、それ以前からトライアル用モデルが合計3台作られている。
シックスは、合計で約100台が提供された。このHEL 46は、その最初期に作られたクルマに当たる。
サイクルフェンダーが高くボディは宙に浮く
セブンと同様に、シックスのイメージといえば、路面へ低く構えたボディで、凛々しい姿を思い浮かべるはず。しかし、HEL 46は例外。タイヤから遥か高い位置にサイクルフェンダーが載り、ボディは宙に浮いている。
最低地上高は印象的なほど高く、荷重移動による傾きも明確。2脚の小さなシートはフレームで持ち上げられ、着座位置も高い。通常なら、路面へ着きそうなほど低い位置へ座るのだが。
通常のシックスよりトレッドが狭く、全長は約300mmも短い。同じシックスを名乗るとは思えないほど、プロポーションが違う。
それでも、このトライアルレーサーは、他のシックスと同様に成功を残してきた。初勝利を収めたのは、1953年6月のフランス・アヌシーで開催された、ロンドン・モーター・クラブのイベントだった。
マシンの名前は「ヴィッキー」。当時は、女性の名前でクルマを登録する習慣があった。現在のオーナーは、マーティン・ハリデー氏。自らステアリングホイールを握り、今も積極的にイベントへ参加している生粋のマニアだ。
カヤックのように、開口部が小さいキャビンへ身体を収める。ソフトなスプリングが、優しくボディを傾ける。まったく、ロータスらしくない。