「対極的な分野」で能力を発揮 ロータス・シックス(2) 現代へ受け継がれる軽量なコンセプト
公開 : 2024.01.13 17:46
感心するほど扱いやすいエンジン
4気筒エンジンは一発始動。レスポンスは鋭く、アイドリング時から勇ましい。クラッチペダルは重めで、ストロークは短い。アクセルペダルのストロークは更に短く、積極的に運転するしかない。
最高出力は78psがうたわれる。トライアルレーサーより2倍以上もパワフルだ。「1172ccと少し大きいのが問題ですね。1100ccクラスへ出場するため、排気量を削ったドライバーも過去にいたようです」。とハリデーが説明する。
クロスレシオへ変更されているが、2速と3速のギア比は離れている。シフトアップまで、しっかり引っ張る。シートポジションはリアアクスルの直前で、挙動が手に取るようにわかる。
フロントアクスルは、驚くほどソリッド。調整式のコイルオーバーダンパーが組まれ、姿勢制御は上品。コーリン・チャップマン氏が見たら、強い関心を示すだろう。
チューニングレベルを考えると、エンジンは感心するほど扱いやすい。2000rpmでも粘り強く走り、3500rpmからカムが乗ってくる感じ。今日は6500rpmまでに制限しているが、さらに回ろうとする。
リンケージを介するシフトレバーは硬め。正確に腕を動かせば、狙い通りに操れる。シフトダウン時には、ダブルクラッチが欠かせない。
フォード由来のブレーキは、爽快なほど強力。ピレリ・チンチュラート・タイヤを鳴かせる勢いだ。ドラムの状態は完璧ではないらしく、サーキット・イベント前に交換する必要があるだろう。
美しく磨かれたアルミ製ボディは、1950年代のレーシングカーそのもの。ハリデーは、リアタイヤにスパッツを被せない姿が好きだという。
対極的な分野で確かな強さを発揮
シャシー番号は60番。1955年にナンバーを取得し、1957年から1958年まで、作家でレーシングドライバーのジョン・ウィットモア氏が所有していた。彼はシルバーストーンやブランズハッチなどでのイベントへ参戦し、最高2位の結果を残している。
1958年に手放され、1969年からはスコットランドに放置されていた。1992年に発見され、FJ.フェアマン氏によってフレームとボディが修復。2000年に仕上がった。
オーナーがスチュワート・カウチ氏へ代わり、エンジンはポール・フォックス氏によってリビルド。2001年に、ヒストリック・スポーツ・カー・クラブ主催のイベントへ出場している。
2002年にベルギーへ移り、2003年から2020年までヒルクライム・レースへ参戦。スウェーデンを経て、2021年のシルバーストーン・オークションへ出品され、ハリデーが購入するに至った。
「ヒルクライムやサーキットでのレースへ出られる、シックスをずっと探していたんです。シェブロンのF3マシンを売却したばかりで、丁度いいタイミングでの落札でした」
聡明なチャップマンのアイデアによるシックスは、モータースポーツの対極的な分野で、確かな強さを発揮した。北ロンドンのワークショップで誕生した小さなスポーツカーの、多能ぶりを証明する事実といえるだろう。
彼が発案した軽量なコンセプトは、ロータス・セブンへ受け継がれた。さらにケータハムとして、現在も多くのドライバーを魅了し続けている。その偉大さを、この2台が改めて教えてくれた。