旧車は「本当の日常の足」になる?(1) フォード・カプリ Mk2で実験 理想と現実に揺れる

公開 : 2024.01.06 09:45

現代の交通環境で役立つ視界の広さ

4気筒エンジンが温まると、ノイズが滑らかに転じる。コルチナのプッシュロッド式からOHCへ進化したユニットは、フィーリングも滑らか。主張される最高出力73ps、最大トルク11.8kg-mを発揮しそうに、調子が良い。

当時のクルマとしては典型的な動力性能で、見た目はモダンといえた。全長は約4.3mあるが、車重は1010kgしかない。アルミニウムが多用された、筆者のアルピーヌA110より100kg近く軽い。

フォード・カプリ 1.6Lと英国編集長のスティーブ・クロプリー
フォード・カプリ 1.6Lと英国編集長のスティーブ・クロプリー

まずはダベントリーから西へ走り、走り慣れた道を通って南へ下り、自宅を目指す。道のりは105km。馴染みのないクルマを短時間に理解するなら、馴染みのある道を運転するのが望ましい。

発進してすぐ、運転席からの視界が驚くほど広いことに気づく。車内は広々。高さ方向は限られるが、荷室も大きかった。現代のモデルも空間効率が追求されているとはいえ、75Lも入るガソリンタンクを載せていながら、カプリの余裕には関心してしまう。

運転はしやすい。全方向に優れる視界は、現代の交通環境でも非常に役立つ。先日試乗したジャガーFタイプと比べると、特にそんな印象は強まる。

ファブリック張りのシートは、見た目はスタイリッシュながら、サポート性がいまいち。現代のシートは、良く設計されている。

操縦系はシンプル。フロントのワイパーは動作音が目立つものの、しっかり水を拭う。ヘッドライトは、予想より遥かに明るい。ラジオデッキはFM放送の普及以前の代物で、音質は良くない。

この続きは、旧車は「本当の日常の足」になる?(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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