能力の半分程度が好印象 フォード・カプリで1週間 旧車は「本当の日常の足」になる?(2) 

公開 : 2024.01.06 09:46

高速道路や郊外の幹線道路、夜間や雨天 現代の多様な条件へ古い量産車は対応できるのか 英国での法改正に合わせ、英国編集長がカプリで確認

能力の半分程度で流している時が好印象

フォード・カプリ 1.6Lの乗り心地の第一印象は、驚くほど良かった。しかし少し走って、この時代のクルマは、能力の半分程度で流している時が1番優れることを思い出した。それ以上飛ばすと、欠点が明らかになっていくのだ。

カプリも例外ではない。平均的な道を平均的な速さで流している限り、落ち着いていて快適。少し飛ばし始めると、姿勢制御が乱れてくる。リア・サスペンションはリーフスプリングで、段差超えも得意とはいえない。

フォード・カプリ 1.6L(Mk2/1974〜1978年/英国仕様)
フォード・カプリ 1.6L(Mk2/1974〜1978年/英国仕様)

一緒に過ごす時間が長くなるほど、現代のサスペンションの優秀さを思い知っていく。英国の一般道は維持管理が芳しくないが、それが日々の不満も大きくなだめていることを再確認した。

ステアリングにパワーアシストはナシ。ステアリングホイールの直径が大きくレシオはスローで、切り始めから鋭く反応することはない。それでも、違和感はない。

ブレーキはしっかり効くものの、ペダルの感触はスポンジー。アシストは備わるが、この10年後のフォード車のような、ダイレクトな感触はない。

最高出力は73psしかないから、0-100km/h加速は14.0秒。スポーティとはいえないクーペだが、筆者としては否定しがたい訴求力も備える。

形と色、そのものが好ましい。当時の人も、カプリのスピリットと同じくらい、デザインを気に入っていた。当時を知らない若い人たちにも、カッコ良く見えている様子。

ケータハムを想起させるシフトフィール

もう1つは、シフトレバーとクラッチペダルのフィーリング。レバーは軽く滑らかに動き、初期の4速MTのケータハム・スーパーセブンを想起させるほど。クラッチペダルも軽く、ストロークは理想的。フライホイールの重さも丁度いい。

高速道路を問題なく走れるが、より高めのギアが欲しくなる。廉価なLグレードなため、タコメーターが備わらない。それでも、110km/h程度で走っていると、高い回転数でエンジンが仕事をしているのが伝わってくる。

フォード・カプリ 1.6Lと英国編集長のスティーブ・クロプリー
フォード・カプリ 1.6Lと英国編集長のスティーブ・クロプリー

ロードノイズは、80km/hを超えた辺りから急に大きくなる。流れが遅めの高速道路でも、少し声を張らなければ助手席の人との会話は難しい。ところが、不思議なことにストレスは大きくない。

カプリ Mk2は全幅が1698mmと細く、渋滞しがちな都市部でも扱いやすい。郊外のカーブでは、限られた車線内でライン取りを楽しめる。スチールホイールは13インチで、幅が控えめなダンロップ・タイヤでも、グリップ力は充分ある。

ボディロールは、現代の感覚ではかなり大きめ。カプリに詳しい友人が、テールハッピーな特性を指摘していたのを覚えているが、それはパワフルなV6エンジン仕様に限られていた。

直列4気筒のカプリは、ステアリングホイールへ明確な感触を伝えつつ、現代のモデルを驚かせる回頭性を披露する。動力性能は及ばなくても、面白い。より強力なエンジンを載せていれば、見た目に合致する活発な走りを披露することだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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