評判通りの過大なパワーはいとも簡単に引き出せた。初期ののエグゾースト・ノートは、6000rpmに達するころには半音高くなる。あまりの炸裂感に怖気づいてしまい、早めにシフト・アップすることもあるかもしれない。決して大げさな表現ではない。バック・ストレートではトロフィー-Rよりも8km/h速度が出ているのだから、驚くのも無理はない。

4WDの逞しいトラクションのおかげで、クイック・ベンドでも強烈な粘り強さを見せてくれる。

以前A45に対し、”まったくもってスロットルで向きを変えられるクルマではない” と表現したことがあるのだが、決してこれは批判ではない。細々と調整する必要がないくらいに、首尾一貫して豊富なパワーに満ちあふれており、この力強さこそがA45をもっとも楽しめるポイントなのだ。前後のトルク配分も絶妙で、スライドさせながらコーナーを抜けるのがことのほか楽しい。

しかしダウンシフト時のギアボックスの反応はいまひとつ。改善の余地がある。高速から低速域に以降する際に、ややぎこちなさが残るのも事実だ。

測定用の機械にはシケインを通り抜けた際のGの数値まで細かく残るのだが、タイトなコーナーにおける平均速度はトロフィー-Rの方が速かった。

もちろんギアレシオの違いが影響しているのだが、それでもトロフィー-Rの敏捷性が際立つ結果になった。トルクステアを軽減するルノーの ’PerfoHub’ やLSDを採用していることも大きい。ノーズが想像以上に軽く感じられ、トロフィー-Rに乗り換えてからというものの、入力に対して従順すぎるほどの反応に、とにかく夢中になって運転をした。

A45に乗っている最中は、ギアボックスやブレーキの未熟さのおかげで、無意識にこちら側がクルマに合わせることがあるのだが、トロフィー-Rに乗っていると、自信を持って思い通りにクルマに指示を出すことができる。ペダルやギアレバーなどの正確性に舌を巻くだけでなく、うっとりするようなシャシーの出来栄えも捨てがたいと感じた。

力ずくで走破しようとするA45をあざ笑うかのように、終始なめらかに、こちらの入力に答えてくれた。

事実、一般道ではダンパー・セッティングゆえにA45よりも衝撃を伝えることが多いのだが、ボディ・コントロールやリニアなグリップは頭一つ分高いところにあり、ほかのどのライバルを打ち負かすことが可能だといっても過言ではない。チューニング・カーとして、常にドライバーを楽しませてくれたのだった。

結論

ベスト・ラップは1分14秒フラット。A45よりもコンマ9秒速いタイムをマークした。ほんの少ししか変わらないじゃないかとお思いの読者もいらっしゃるかもしれないが、筆者はかなり大きな差だと捉えている。

このタイムに達するまでの道のりが大きく異なるからだ。A45は、日常的な実用性もカバーしているがゆえに、サーキットの走行ではわずかに落ち着きを失うことがあるし、限界点もトロフィー-Rほど高くない。これに対して、トロフィー-Rは最初から最後まで至極シャープなのである。