フェラーリ譲りのV8エンジンでお別れ マセラティ・ギブリ 334ウルティマへ試乗 限定103台

公開 : 2024.01.09 19:05  更新 : 2024.08.01 10:01

フェラーリ譲りのV8エンジンを堪能

スタッドレスタイヤと路面状況が重なり、操縦性のタイトさはいまひとつ。限界領域での挙動も、若干予想しにくかった。少なくとも、暖かい季節にグレートブリテン島で試乗したギブリ・トロフェオは、より引き締まった身のこなしだったと記憶している。

この334ウルティマも、乾燥したアスファルトなら、一層スマートな操縦性を楽しめるに違いない。とはいえ、マセラティらしいエンターテインメント性や「魂」を味わえなかったわけではない。

マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)
マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)

大きなシフトパドルを1度弾くだけで、ドライバーの気持ちへ火が付く。ZF社製の8速ATをマニュアルモードへ切り替えれば、フェラーリ譲りのV8エンジンをダイレクトに堪能できる。

アルプス山脈には、トンネルも多い。気付けば、アクセルオフでのオーバーラン時の破裂音やぐずり音を、反響させて楽しんでいる自分がいた。

先代のグラントゥーリズモに載っていた、自然吸気の4.7L F136型ユニットのようなシンフォニーは奏でないとしても、音響的な魅力は近年の雄。ハイブリッド化されたライバルンとは、比べ物にならないほど豊かな聴き応えで満たしてくれる。

熱狂的トライデント信者のためのギブリ

客観的に見れば、ギブリ 334ウルティマの実力は競合の水準へは届いていない。それでも、機会が許すなら、筆者も1台を手にしたいという気持ちが湧いてくる。

英国価格は15万9625ポンド(約2953万円)と、ギブリとしてはかなり強気。裕福なマセラティ・コレクターを相手にした、限定モデルだといえる。生産数は少なく、本当に欲する人は躊躇しないのだろう。

マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)
マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)

他方、内燃エンジンを搭載したイタリアン・スポーツサルーンといえば、アルファ・ロメオジュリア・クアドリフォリオが存在する。ひと回り小さいが、必要な予算は半分で済む。そのドライビング体験は、もっと心躍るものでもある。

熱狂的トライデント信者へ向けた、高価なギブリかもしれない。だとしても、丁寧に仕立てられたボディがくるむ、素晴らしいV8エンジンの魅力へ抗することは難しい。

◯:他に例がない個性 素晴らしいサウンドのV8エンジン 有能な8速AT
△:やや精彩に欠ける操縦性 少し古びて見えるインテリア

執筆:スティーブン・ドビー

マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)のスペック

英国価格:15万9625ポンド(約2953万円)
全長:4985mm
全幅:1945mm
全高:1485mm
最高速度:334km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:7.9km/L
CO2排出量:286g/km
車両重量:1969kg
パワートレイン:V型8気筒3799cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:580ps/6750rpm
最大トルク:74.2kg-m/2250-5250rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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