第4四半期は初の「テスラ超え」 年間販売302万台BYDがテスラを猛追 要因は地場での台数

公開 : 2024.01.06 08:25  更新 : 2024.01.09 09:50

BYDは世界のどこで売れている?

BYD乗用車は現在のところ9割以上が中国市場で販売されている。理由は簡単なことで、BYDがアジアやオーストラリアなど国外で本格的に乗用車販売を開始したのが2021年秋以降だからである。

日本市場においても同様で、テスラが日本での販売を開始したのは2014年9月で10年近い販売実績があるが、BYDの乗用車販売は2023年1月以降なのでまだ1年にも満たない。

BYDが販売台数でテスラを猛追
BYDが販売台数でテスラを猛追    加藤博人

BYDは中国以外の市場ではまだスタート地点に立って間もない印象だが、実は東南アジアやオーストラリアでは販売台数が急速に拡大しつつある。

とくに新車販売の6割がEVというタイを中心とした東南アジアにおいては2022年Q3にはベトナムの新興メーカー「ヴィンファスト」が約4割のトップシェアを持っていたが2023年のQ3ではBYDがあっさり抜いてトップに立った。BYDはタイに2024年中に稼働する工場の新設を発表しており、タイ国内向けと他国への輸出も予定しているという。

ただし、EVの販売台数や普及事情については、各国のEV政策や充電設備などのインフラ、各種助成金の支給対象など様々な条件が絡んで来るので、これまでのようにクルマ自体の性能や品質、サービス体制などが販売台数に直接リンクしない事情もある。

実際、日本では海外メーカーでも日本メーカーでも政府が支給する「CEV補助金」の額に差はつかないが、世界の国々ではEVへの購入補助金やメーカーに対する助成金などを出すにあたり、外資メーカーかどうか? 部品の現地調達率、自国への投資額などによって各種の優遇措置が変わってくるケースも少なくない。それらが販売台数に大きく影響することもある。

中国における販売ランキングで、日産シルフィが日本車唯一のランクイン!

中国市場における2023年11月の販売台数を見ると、1位はテスラモデルYだが、続く2位はBYDシーガルである。

10位以内にBYD車が5車種入っている。シーガルは2023年4月の上海モーターショーでお披露目されたコンパクトBEVで7万3800~8万9800元(約147~179万円)という安価な価格設定もあり発売以来、大人気となっている。

BYDが販売台数でテスラを猛追
BYDが販売台数でテスラを猛追

また日産シルフィが前年同期比+76.4%/唯一の日本ブランド車として3位にランクインしている。値下げが相次いでいる中国といえどもBEVはまだまだ高額であり、後述するがナンバープレートの発給に悩まされないオーナーはシルフィのような安くて燃費の良いガソリン車を買いたくなるのだろう。

2023年12月、北京で開催された「24中国自動車市場発展予測サミット」において2023年の1年間に中国で販売された新車は3000万台前後。そのうち新エネルギー車(BEV/PHEV/FCV)は940万台前後(2022年688万台)になることが公表された。

中国では2023年、各社のBEVが軒並み大幅値下げに踏み切ったことも販売台数急増に関係していることは間違いない。BYDも2023年12月に全シリーズで値下げを敢行し、吉利汽車傘下の高級EVブランド・ジーカーや話題の新興EVメーカー零PAO汽車(リープ・モーター)/理想汽車(リ・オート)なども30~70万円の大幅値下げを実施している。

テスラも中国市場では2022年秋から複数回の値下げを行ってきた。各社の値下げ合戦によってBEVの販売台数は大幅にアップしているが、実はもうひとつEV増加の背景にはナンバープレートの発給事情も関わっている。

北京や上海、広州などの大都市圏内では、急速なモータリゼーションの進行によって各地で交通渋滞が発生し、大気汚染の原因になってきた。そこで、新たにクルマを購入する際にはナンバープレートの発給に制限が課せられるようになったのである。

新エネルギー車購入の際にはほぼ制限はないが、ガソリン車(ハイブリッド車含む)では長ければ1年以上待つことも珍しくない。ただし、日本と違って中国では一度発給されたナンバープレートはクルマを買い替えても使用できるため、過去にクルマを所有していればガソリン車であってもナンバープレート発給に悩むこともないのだ。

BYDが日本での乗用車販売を開始して間もなく丸1年となる。2023年1月末に第一号としてオープンしたBYDオート東名横浜に始まり、現在では試乗予約などができる開設準備室を入れて全国に51か所がオープンしている。

気になる登録台数は2022年12月~2023年11月までの1年間で1194台。同時期に登録されたヒョンデの3倍弱という数字はなかなか立派といえるだろう。2024年は新たにBYDシールの日本導入も始まる。JMSで参考出品され話題を集めたダイムラーとの共同開発で生まれたミニバンのデンツァ・D9も気になるところだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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