マクラーレン750S メーカー最速の使命を 公道でスパイダー/サーキットでクーペにそれぞれ試乗
公開 : 2024.01.10 17:45
国際試乗会にてマクラーレン750Sに搭乗。マイナーチェンジ前の720Sからどう変化したのでしょうか? 空力と軽量化がどうやらキーワードとなりそうです。マクラーレン最速の使命を背負うクルマの試乗記をどうぞ。
目に見えるわかりやすい違いはエクステリアに
750Sはマクラーレンのラインナップにおいて、最速の使命を背負ったモデルだ。
それすなわち、スポーツカーブランドとしての背骨を担う存在ということになる。アルトゥーラが先進性を、GTが多様性を趣旨とする中、看板を背負って最前線を突っ走るのが務め……と、その任は重い。
マクラーレンは750Sを720Sのアップデート的な位置づけとし、部品単位で見れば30%程度が更新されているという。彼らのエンジニアリングの要であるキャビン部のカーボンタブにも変更はない。でも、変更数なんて数えようによって盛りようがあるのも確かだ。
そこを正直に申告してしまうのがマクラーレンのクルマづくりの生真面目さということになるのだろう。そう擁護したくなるほどに、750Sは全てがマイナーチェンジという尺度では説明できないほどに変わっていた。筆者にいわせれば、これはフルモデルチェンジに等しいと思う。
共通するのは空力特性の改善に伴うディテールの変更だ。特徴的なフロントマスクは前面形状が抵抗を減らすべくより滑らかになり、フロントダクトやサイドインテーク周りの形状も最新の解析成果が盛り込まれたものとなっている。
そこからリア側に向かうと、有効面積を20%拡張したカーボン製のアクティブリアウイングや、ボトムのエアフローデザインに寄与するハイマウントのエキゾーストシステムなど、750S独自の要素が見て取れるが、これらは765LTの知見が活かされたものだ。これらによってダウンフォースの総量は720Sに対して5%増強されているという。
さまざまな軽量化
750S進化の大きなポイントは前述の空力に加えて目に見えにくいところにもある。それは軽量化だ。
そもそも720Sは同級のライバルに対して100kg以上は異なる、その軽さを瞬発力や旋回性に置き換えて独自のダイナミクスを築いていた。750Sでは更にシート/エキゾーストシステム/ホイール/ガラス/インパネ周り/サスシステムに至るまで細かな削減を試み、仕様によっては最大30kgの軽量化を果たしたという。ちなみにクーペの乾燥重量1277kgは、GT3やGT4カテゴリーのレース車両にも比肩する。
前述の通り、750SのシャシーのコアとなるカーボンタブのモノケージIIは720Sと同じ。サスペンションはオールアルミのダブル・ウイッシュボーンと変わりはない。
一方でマクラーレンがMP4−12Cの代からモンローと共同開発する独自のサスペンションシステム「プロアクティブシャシーコントロール」は第3世代へとスイッチし、ダンパーコントロールを担うアキュムレーターの内圧チューニングとスプリング構造の変更、レートの最適化など、パフォーマンスに合わせた変更が加えられている。
内装はアルトゥーラで提案された新たな意匠がこの750Sでも継承されている。ドライブモードに応じて電動で可変していたメータークラスターはステアリングコラム固定式となり、ドライビングポジションに関わらず視認性がしっかり確保されると共に軽量化にも寄与するよう改められた。
従来、センターコンソールに配されていたドライブモードのセレクターはクラスターの左右に移され、走行中やグローブ着用時の操作もしやすいノブ型にデザインされている。
キャビンデザインやインターフェースは720Sと変わらない。断面形状まで考え尽くされた細身のステアリングやその奥に据えられるパドル/ウインカーレバーなどの操作性、前方のみならず後側方にまで気遣われた視界……と、世界一と太鼓判を捺せる運転環境はしっかり引き継がれている。