マクラーレン750S メーカー最速の使命を 公道でスパイダー/サーキットでクーペにそれぞれ試乗
公開 : 2024.01.10 17:45
試乗ケース1 公道でスパイダー
スパイダーのルーフ開閉システムは720Sと同じで、開閉に要する時間は約11秒と、信号待ちのひと時でもボタンひとつで姿を変える。
その屋根を開けて走ると気づくのは、音色が整えられたと共にハイトーンとなったエキゾーストノートだ。720Sでは音色に混じっていたガ行の濁音系の音が影を潜め、回転上昇とともにクォーンと高音質が響き渡るようになった。
ハイマウントのステンレス製エキゾーストシステムはサウンドにも気遣って設計されたと聞くが、その変化は小さからぬものといえるだろう。4LのV8ツインターボM840Tユニットもハード的な変化はなくも、吹け上がりのシャープネスが一段と高まったように感じられるのは、ECU的な変化もさることながら、やはりエキゾーストから受け取れる印象によるところも大きそうだ。
同様に、普段乗りのレベルでもその変化がしっかりと感じられるのは足回りの動きだろう。低負荷域でもGの変化が車体の動きにしっかり現れ、自らの操舵や制動といった操作がより色濃く姿勢に反映されるようになった。
情報が濃くなったぶん、クルマとドライバーとの接点も密になったと感じられる。そして乗り心地はこういうクルマとして著しく洗練されたものになった。バネ下の動きの精緻さや足回りからの音振の小ささは、ポルシェ911を引き合いに出さねばというほどのレベルに達している。身の軽さから推すれば物量で音振を封じ込めたわけではないだろうから、アコースティック的には不利なカーボンタブでこの快適性は素直に素晴らしいと思う。
試乗ケース2 クローズドコースでクーペ
クローズドコースではカーボンフルバケットや軽量鍛造ホイール&カップタイヤ、強化ブレーキやロールケージ等が組み込まれたトラックパッケージを装着したクーペに試乗したが、公道試乗で感じた饒舌な動きはサーキットドライブでも健在だった。
さりとて不安になるほどの大きな動きではなく、ロール量はしっかり抑えながらダイアゴナル状態では対角的接地をしっかりとドライバーに伝えてくる。柔らかくはないタイヤをムニュッと潰しながら後輪でねっちりと蹴っていく感触は、720Sより明らかに艶めかしい。
絶対的に軽いのに軽薄な動きではないというのは、まさにプロアクティブシャシーだからこそのフィーリングだろう。
ブレーキは絶対的な制動力だけでなく、踏力に応じたリニアリティも酷使によるストローク変化の小さいロバストネスもしっかり備わっている。750SのブレーキシステムはAPレーシングとの共同開発だが、その仕上がりはライバルに対してもまったく負けていない。というより、このブレーキがなければサーキットを攻めるのは難しいとさえ思わせる。
コース的には様々なクルマで体験している場所ながら、それらの経験と比べてもコーナーの迫り方が尋常ではない。これは軽さに加えてギア比をファン・トゥ・ドライブのためにローギアード化した成果といえるだろう。
750Sはその性能向上を、より一般的なシチュエーションで享受できるように企てられた一方で、コーナリングマシンとしての適性も際のキワまで高められている。内燃機のみで走る、そして電子制御の依存度が低い、バンカラなピュアスポーツとして自信をもって推せる1台に仕上がっていた。
試乗車のスペック
マクラーレン750S
価格:3930万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4569×1930×1196mm
最高速度:332km/h
0-100km/h加速:2.8秒
燃料消費率:12.2L/100km
CO2排出量:276g/km
車両重量:1277kg
パワートレイン:V型8気筒3994cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:750ps/7500rpm
最大トルク:81.58kg-m/5500rpm
ギアボックス:7速オートマティック
タイヤサイズ:245/35R19(フロント)305/30R20(リア)