表紙だけでクルマ1台分の重さ? 自動車雑誌はこう作られる! 制作工程紹介

公開 : 2024.01.20 18:05

・新型車の取材、イメージCGの作り方、印刷まで。
・創刊126年の英国の自動車雑誌『AUTOCAR』の制作工程。
・使われる紙の重さはランドローバー2台分以上!

『AUTOCAR』ができるまで

本誌AUTOCARは、英国で紙の雑誌を発行している。創刊は1895年にさかのぼり、「世界最古の自動車雑誌」であることを誇りにしている。創刊以来、我々の焦点は変わらないが、雑誌を作るプロセスは大きく変わった。

週刊誌として5日間で70ページ以上を埋めるのは大変な作業だ。待望の新型車発表や試乗会のように、かなり前からカレンダーに書き込まれているものもあるが、急な取材が入ることもある。いずれにせよ、記事は各セクションの担当編集者のブリーフに従って執筆されていく。記者には文字数、画像の大まかなアイデア、提出期限などが依頼される。

英国の自動車雑誌『AUTOCAR』の製造工程を紹介する。
英国の自動車雑誌『AUTOCAR』の製造工程を紹介する。    AUTOCAR

期限厳守だが、仕事量は記事の内容によってまったく異なる。クルマの試乗を例にとれば、午後に田園地帯をドライブするような簡単な仕事もあれば、何日もかけて移動し、ハンドルを握り、写真撮影をしてから、キーボードに向かうこともある。

ライターは落ち着ける時間と場所を見つけ、原稿を準備できたら編集者に渡す。そして、制作チームがそれを出版物として仕上げる準備を整えていく。

画像選び イメージCG作成も

まず表紙で使われる画像は、社内カメラマンが撮影した写真やピクチャー・ライブラリー、企業のプレスサイトなどから写真編集者のベン・サムメレル=ユードが厳選し、構成する。

また、水晶玉を覗くように自動車業界の未来を占い、イメージスケッチ(レンダリングCG)を描くこともある。サムメレル=ユードは自身のイラストレーションの才能を活かし、まだ見ぬ新型車を非常に細かく描写してしまう。

編集部独自で予想イメージCGを作ることも多い。(画像はトヨタ・セリカ)
編集部独自で予想イメージCGを作ることも多い。(画像はトヨタ・セリカ)    AUTOCAR

彼はこう説明する。「ニュース編集者のフェリックス・ペイジが、概要をシンプルに説明してくれるんです。最近のコンセプトカーや各ブランドのデザイン言語を見て、それから現行車のプロポーションを見る。それが一番シンプルな方法です。一方、(昨年)11月8日にスクープしたトヨタ・セリカの復活のように、もっと未来的なものの場合は、その形をもう一度考えてゼロから描く。アウトラインを描いて、グリルの形もぼんやりと描いて、それを埋めていく。新型A6なら目隠しをしたままでもできますよ」

現代のクルマ、特にドイツ車の場合は均質性があるため、スケッチは比較的簡単だという。「ロシア人形みたいなものですよ」と冗談めかして言う。ボルボEX30ロータスエメヤダチア・ダスターなどもそうだ。

すべては時間との戦い

その後、デザイン作業の次の段階に入る。アート・エディターのサラ・エズギュル、ジュニア・デザイナーのタラ・トゥーヒー、グループ・アート・エディターのスティーブン・ホプキンス(愛称「ホッポ」)は、サムメレル=ユードから提供された画像とストーリー構成を基に、ページレイアウトに取りかかる。

エズギュルは、サムメレル=ユード、関連セクションの編集者、そして編集長のサミー・シャーとの間で循環的な話し合いが行われることで、すべての作業が素早く「進化」していくと述べている。

AUTOCAR誌の表紙印刷
AUTOCAR誌の表紙印刷    AUTOCAR

エズギュルは現在デザイン中の特集を指してこう話す。「原稿はWordに書いてあるんですが、4ページになるはずです。写真がなかったので、先ほどベンに頼んで探してもらいました。今日、デザインについて考えた結果、見開き2ページの方がいいと思ったので、サミーと話し合い、セクション編集者に変更を承認してもらったんです」

「レイアウトして、ベンと写真について話し合いながら、ストーリーを読み、ページ上でどう見せるべきかの感覚をつかんでいきます」

刻々と迫る時間のプレッシャーの中で、全員が協調して仕事をするためにも、編集と制作の間を行ったり来たりすることは不可欠である。時計の針の音がこれほど威圧的に感じられることはほとんどない。

毎号のページ数と制作時間を考えると、毎週の締め切りに間に合わせるために各ページに割ける時間は平均して30分強。これは理想的な状況下での話であり、実際には機材トラブルや交通機関の乱れ、パンデミックなど、さまざまな要素が仕事に支障をきたす。これに加えて、ウェブ版の更新や管理もしなければならない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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