表紙だけでクルマ1台分の重さ? 自動車雑誌はこう作られる! 制作工程紹介

公開 : 2024.01.20 18:05

内容が決まり次第、印刷会社へ

このように混沌とした状況に秩序をもたらすのがシャー編集長の仕事であり、ページの並べ順を指示し、仕上がりを見守る。

「各作業にどれくらいの時間がかかるか、予定より遅れているのか進んでいるのかがわかるくらい、長い間一緒に仕事をしてきました」とシャーは言う。出来上がったページのデータは、複数のセクションに分けて印刷所に送られるが、提出期限ギリギリになって一大ニュースが飛び込むこともある。

印刷された上下見開きのページ
印刷された上下見開きのページ    AUTOCAR

「印刷会社は少し余裕を持たせてくれますが、他の印刷物との兼ね合いもあるので、数分以上遅れると電話が鳴り始めます。とはいえ大きなネタを逃したくはないので、編集者と話し合い、判断することになります」

シャーは記事校正においても重要な役割を担っている。副編集長のクリス・カルマー、特別寄稿者のピーター・マクセーン、ティム・ディクソンとともに、ルールに忠実に書かれているか、読み応えがあるか、AUTOCARらしさがあるか、法的に問題がないか、内容が正確かどうかを確認する。その後、画像のキャプションと見出しが追加される。

同時に、外部チームが各ページの画像を仕上げる。道路標識などの細部が見出しや他のページとぶつからないようにし、必要に応じて色調補正や画像の明暗を調整する。

その後、各記事はシニア・エディターに送られ、校正される。「完成したページは少なくとも3回は読まれます。担当した副編集長、校正する編集者、そして最後にわたしかクリスが目を通します。ページはどんどん更新されていくため、片目で常に時計を見ているような状態であっても、最終版にはしっかりと目を通すことが重要なのです」とシャーは言う。

一方、エズギュルが1ページずつ承認し、複写作業をチェックし、すべてを確認する。

ランドローバー数台分の重さの紙

最終的に、ページは雑誌のセクションにまとめられ、PDF形式でロンドンのAUTOCAR本社からウォルバーハンプトンの印刷会社、ウィリアム・ギボンズ&サンズに送られる。

データが印刷会社に到着するとすぐに(通常は金曜日の昼過ぎ)、印刷版にセットされる。見開きの上側に4枚、下側に4枚の刷版がある。2人の印刷オペレーター(1人はページの上半分、もう1人は下半分)が、正しいカラーフォーマットで正しくセットされているかをダブルチェックする。「スタート」ボタンを押すと、まず光沢のある表紙が印刷され、次に試乗記で構成される中間セクションが印刷される。

印刷物に誤りがないか、何度もチェックを重ねる。
印刷物に誤りがないか、何度もチェックを重ねる。    AUTOCAR

ページがラインから出てくるとき、オペレーターは印刷機にプログラムされた色と一致しているか、また何か問題がないかをチェックする。印刷とチェック作業は、毎週末に何万回も繰り返される。

印刷の材料は膨大で、表紙に使われる紙だけでもアリエル・アトム1台分の重さがある。さらに中面に使われる5トンを加えると、『AUTOCAR』各号の総印刷部数はランドローバー・ディフェンダー2台分よりも重くなる。年間100万部以上の印刷を合わせると、超音速旅客機コンコルド3機分、280トン以上になる。

月曜日の朝までにすべてを印刷する。その後、半完成コピーがシニア・マネージャーのもとに運ばれ、正しい順序で正しく印刷されているか再確認される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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