「タイプR」再考 1992年式NSX-R vs 2017年式シビック・タイプR
公開 : 2017.10.29 10:10 更新 : 2017.10.29 11:38
「タイプR」。魅力的な響きでしょう。なかでも象徴的なNSX-Rと、最新型のシビック・タイプRを競わせ、真の魅力を探ります。
もくじ
ー いま、セナの代わりを選ぶなら
ー もっとも偉大なホットハッチ
ー あくまで「本気のひと」のための
ー シビックのことを忘れそうになる
ー (おまけ)タイプR:栄光の5台と英国の中古車相場
いま、セナの代わりを選ぶなら
この25年間、ホンダにとってのタイプRとは何だったのだろう? その答えを探るべく、ダン・プロッサーは1992年式NSX-Rと2017年製シビック・タイプRのキーをとった。
このビデオを見た事があるだろう。茶色のローファーに残念なほど真っ白い靴下。アイルトン・セナが1990年代初めに鈴鹿でホンダNSX-Rをテストした時のものだ。
セナにとっては単なる宣伝活動であり、わたしのようなマニアが四半世紀経った後もあの日の事を延々と語り続けているなんて、当時の彼は想像もしなかったに違いない。
でも忘れ去ってしまうにはあまりにも惜しいとはお思いにならないだろうか? 歴代最高のF1ドライバーのひとりが、チャンピオンの座が脅かされていたとは言えその頂点にある時に、レース界における伝説のサーキットのひとつで特別なスーパーカーを疾駆させている。まるで外科医のように正確なヒール&トウと縁石に乗り上げながらの4輪ドリフト……。
茶色のローファーに残念なほど真っ白い靴下には首を傾げざるを得ないが、そのドライビング・テクニックにはいささかの影響もない。
伝説のF1ドライバーの代わりを務めるのはフェルナンド・アロンソ以外には考えられない。そしてクルマは新たに登場したばかりのシビック・タイプRである(まさにこのページの写真のクルマだ)。
写真撮影の後、地味なトレーニング・シューズと地味な靴下を履いた2度のタイトルを誇るワールド・チャンピオンが、シビック・タイプRを走らせるのは、もうひとつの伝説的なサーキットであるシルバーストンである。
しかし、Q3進出をかけてマゴッツとベケッツのふたつの名物コーナーを攻めるはずが、アロンソは「F1関係者用」と表示された駐車スポットにあっさりとクルマを押し込んでしまうだろう。
なるほど。あの鈴鹿を超える瞬間などないのだ。
シビック・タイプRとあの素晴らしい初代NSX-R(このクルマはセナが運転したチャンピオン・ホワイトではなく、パール・イエローに塗られていた)がわたしの前に並んでいる。キーはポケットにある。まさに今こそこの25年間について語るべき時だろう。